流行語大賞も激戦に!ドラマの名セリフ

2013年は、話しベタ日本人の「伝え方元年」佐々木圭一(ささき・けいいち)
コピーライター/作詞家/上智大学非常勤講師 上智大学大学院を卒業後、97年大手広告会社に入社。後に伝説のクリエーター、リー・クロウのもと米国で2年間インターナショナルな仕事に従事。日本人初、米国の広告賞One Show Designでゴールド賞を獲得(Mr.Children)。アジア初、6ヵ国歌姫プロジェクト(アジエンス)。カンヌ国際クリエイティブアワードでシルバー賞他計3つ獲得、AdFestでゴールド賞2つ獲得、など国内外51のアワードを獲得。郷ひろみ・Chemistryの作詞家としてアルバム・オリコン1位を2度獲得。撮影・石郷友仁

 今年ほど、ドラマが注目され、名セリフが生まれた年もめずらしいです。まず、NHKの『あまちゃん』。放送時間が8:00スタートに変更になってから過去最高視聴率に。ここで生まれた名台詞「じぇじぇじぇ」。ヒロインである能年玲奈さんが使っていた驚きをあらわすコトバ。これも実は、名言になるための技術が使われています。「リピート法」です。くり返すことにより、人は覚えやすくなり、感情ものるのです。リンカーンの「人民の人民による人民のための政治」も、映画解説者の淀川長治さんの「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ」もリピート法です。

 そして、ドラマ『半沢直樹』。この多様化の現代で瞬間最高視聴率が50%を超えた、お化け番組。そこで生まれた名台詞が「倍返しだ!」です。私が注目したのは、このセリフの前に必ず入っていたセリフです。「やられたら、やり返す」。これも「ギャップ法」という技術が使われています。正反対のコトバを使うと、セリフが強くなるのです。たとえばプロ野球の名言「記録より、記憶に残る選手になりたい」。たとえば前田敦子さんの「私のことは嫌いになっても、AKB48のことは嫌いにならないでください」も同じ技術です。このギャップが手前にあったから、「倍返しだ!」が強烈に浸透したのです。もし「やられたら、やり返す」がなく「倍返しだ」だけだったら、ここまで流通することはなかったでしょう。

 名言は、たまたま名言として残っているのではありません。名言になる技術が使われているから、人の心に残って、名言となっているのです。