東京の中央線以南の読者にとって、今回は関心の「か」の字も呼び起こさない企業を取り上げる。ヤオコーは埼玉県が地盤であり、ヨークベニマルは福島県を中心として北関東にその店舗を展開する。

 いずれも食品スーパー業界に属し、業績好調な企業として知られる。ただし、両社はともに中央線以北という点で、西日本の読者にとって、やはり「か」の字も呼び起こさない。

 ヤオコーは、上場企業である。ヨークベニマルは非上場であるが、イトーヨーカ堂やセブン-イレブン・ジャパンと並んで、セブン&アイHDの子会社である。両社とも店舗を展開する地域が限られているので、全国的な知名度が劣るのはやむを得ない。

 それにもかかわらず今回、こうした企業同士の比較分析を取り上げるのには、それなりの目的がある。企業名に馴染みはなくとも、決算書を利用した「数値分析」によって、何をどこまで読み取れるか、に挑戦することにある。

 見方を変えれば、企業の決算書は分析する者に「何を語りかけるのか」ということでもある。

 立地条件や取り扱う商品の特性などに注目して、その企業を評価する手法もあるだろう。それは球形のサイコロを転がすようなものであり、論ずる人によって結論(賽の目)が異なる場合が多い。

「数値分析」の場合、その実務解は一つである。計算式を統一しておけば、誰が計算しても、総資本利益率ROAや自己資本利益率ROEは同じ値を示す。数値の解釈に主観が入り込む余地はあるが、方向性がブレることはない。

 食品スーパー業界はどこも似たような商品を棚に並べており、低価格だけが勝敗の分かれ目のように見えてしまう。果たしてそうだろうか。

 2014年4月から消費税率が引き上げられる。食品スーパー業界は特に、生き残りをかけた激戦市場だ。

 利根川を挟んで睨み合う両社は、食品スーパー業界でどのような経営戦略を展開しようというのか。両社が抱える課題と今後の成長性を、両社の決算書を分析することによって「語らせてみる」ことにする。

 おそらく、西日本の読者にとっても、参考となるものがあるはずだ。