放送通信事業者でありながら、東京電力管内などの一部地域でマンション向けに電力供給を開始したJCOM。電力小売りの事業戦略について森修一社長に聞いた。
──10月にケーブルTV事業部門の中に「電力事業推進室」を設置しました。電力小売り事業に踏み込む狙いは何ですか。
あくまでもケーブルTV(CATV)の加入者獲得と解約防止が狙いです。電力事業そのものですぐにそろばんが立つというよりも、加入者に魅力的なサービスを提供する効果のほうが大きい。
CATV業界の成長率はほぼ横ばいで、今まで通りの営業をやっていては生き残れません。いったんJCOMに入ったら手放せないと思ってもらうには、最大の強みである地域密着型のサービスを強化していくことが重要なのです。
CATVは細かく地域に合ったサービスを提供できるポテンシャルがあります。電力供給も、加入者にいかに高い付加価値を提供できるかということに知恵を絞った結果、出てきたものの一つ。サミットエナジー(住友商事グループの電気事業会社)からJCOMが卸売りの電力を買い、それを小口に販売することで、毎月の電気料金が約5%安くできます。
──「JCOM電力」に変える加入者は増えているのですか。
例えばマンションであれば、すべての世帯が地域の電力会社と個別に契約しているため、変更するには全世帯の同意が必要となり、一朝一夕には進みません。それでも、昨年から供給を開始している第1号案件の東京都杉並区のマンションでは、2カ月で全52戸の同意を得ましたし、その次は、84戸の同意を1カ月半で獲得しました。最低でも3カ月はかかるといわれていたので、これには他の一括受電サービス事業の方もびっくりしていました。
それだけ、新しい電力のサービスに興味を持っている人がいるということです。今までは加入者獲得の確率は5%ほどでしたが、電力をセットにし始めてからは20%に上がっています。これから電力自由化が広まれば、全国で約300万世帯は変更を検討してくれるのではないかと期待しています。