旅行に行ったときに買う“おみやげ”。職場や家族向けにお菓子を買うのが一般的ですが、中には自分の思い出用に買う方もいるのではないでしょうか。今回ご紹介するのは、世界各地の珍しい“おみやげ”を集めた『ぼくのおみやげ図鑑――森本哲郎 旅のエッセイ』です。
地球を何周もした
学芸部出身の森本氏
むかしむかし、全国紙の学芸部には恐ろしいライターがたくさんいて、深い教養と卓越した文章力で読者をうならせていました。筆者も中学生のころからうなっていた一人で、「どうしたらこのような文章を書けるのかなあ」と大学生になってもうなり続けていました。
当時(1960-70年代)、「朝日新聞」で署名入りの長い記事やコラムでうならせていた一人が森本哲郎さんです。森本さんは先日、2014年1月5日に88歳で他界されました。本書『ぼくのおみやげ図鑑』は雑誌「カー・アンド・ドライバー」などで連載していた原稿と写真をまとめたもので、2005年4月に出版されています。
森本哲郎さんは1953年、東京新聞社会部から朝日新聞社に移り、学芸部記者、次長などを経て編集委員として76年まで新聞に書き続けていました。新聞記事を元に単行本化された『文明の旅』(新潮選書、1967)は熟読したものです。取材で地球を何周もした経験と歴史・地理・文化史の知識を織り混ぜた文章は圧倒的でした。