「たかがゆるキャラ」と侮るなかれ。2013年は、「ゆるキャラ」ブームが日本列島を席巻した年だった。代表選手の「くまモン」は前年の関連商品の売上が293億円以上に上り、「ふなっしー」はバラエティ番組やイベントに引っ張りだこで、休む暇もない。ファンのコミュニティは雪だるま式に拡大し続け、それらが生み出す経済効果はバカにならない規模に膨れ上がった。今や子どもや女性ばかりでなく、オジサンまでもがゆるキャラに癒されているという。今、どんなゆるキャラが人気なのか。彼らのビジネスモデルには、どこに強みがあるのか。そうしたリサーチから、日々の仕事のヒントを導き出せるかもしれない。年末年始休業に入る今、ビジネスマンの読者諸氏にも、彼らの「超経済効果」をゆる~く学んでほしい。(取材・文/プレスラボ・岩見杏)

「くまモン」を見るとホッとする……
疲れたオジサンも癒やすゆるキャラたち

2013年を席巻した「ゆるキャラ」たち。今やゆるキャラ人気は、我々の想像を超える過熱ぶりだ(写真提供:鹿児島経済新聞)

「こいつの顔を見ていると、ホッとするんですよ。仕事から疲れて帰ってきたとき、そして何か嫌なことがあったりしたとき」

 都内在住の会社員・斉藤守さん(仮名・40代)は、熊本県のゆるキャラ「くまモン」のぬいぐるみを自宅のソファに置き、気分が沈んだときなどに眺めているという。

「先日、妻に指摘されたんですが、気がつくと、人間のように話しかけていることもたまにあるようです。『おい、今日は元気だったか?』とかですね(苦笑)」(斉藤さん)

 もともとは妻が大好きで買ってきたくまモンだったが、今では斉藤さんのほうが愛着を持っている。総合商社で働く斉藤さんの仕事はハードで、帰宅が午前様になることも多い。妻や娘はとっくに寝ている。テーブルの上に用意された夕食を電子レンジでチンしていると、言いようもない空虚感に襲われることがある。「毎日毎日こんなに働いて、おれの人生って、こんな風にしてあっという間に終わってしまうんだろうな」と。

 そんなとき、ストレスを少しだけ緩和してくれるのが、ソファの上に転がっているくまモン。くまモンを目にすると体から余計な力が抜け、フッと我に返った気がするのだという。会社の部下や女性社員には明かせないそうだが、実は同世代の男性社員にも「ゆるキャラファン」が数人いるという。

「ゆるキャラのどこに癒やされるのか」と問うと、斉藤さんはビジネスマンらしく、冷静な分析を返してくれた。