おみやげを買う
4つのコツ
『ぼくのおみやげ図鑑』は、40年以上の取材旅行で持ち帰った「おみやげ」を紹介したもので、51ヵ所の51の物産が並びます。欧米アジアはもとより、アフリカ各地の「おみやげ」が目を引きます。54ページを費やしてカラー写真で紹介され、詳細に観察できます。
筆者など、外国で何か購入する際、さんざん悩んだあげく、つまらない物を買って後悔するわけですが、森本さんは「おみやげ」を買うコツを4つあげてくれます。
第1に、自分の眼を信じること。いくら他人にけなされようと、自分の気に入ったものには、かけがえのない価値があるのだ、と自信を持てばいい。
第2に、高価なものはつまらない、と悟ること。なぜなら、金に糸目をつけなければ、一般にいいとされる品は何でも手に入るからである。宝は安いもののなかに隠れている。それを探し出すことが、みやげを買う最大の愉しみなのだ。
第3に、欲しいと思ったら、その場でためらうことなく手に入れること。またの機会もあろう、などとあきらめてはいけない。そんなチャンスは二度とこないのだから。
そして第4は、それらをいつも自分のまわりに並べておくこと。むろん、置く場所の問題はあろう。が、どんな狭いスペースにでも二点や三点は飾れるはずだ。それを時折り展示替えすればいい。(略)『ぼくのおみやげ図鑑』5ページ
スペインのコルドバの土産物屋で森本さんはドン・キホーテの大看板を目にする。
その店先に大きなドン・キホーテが立てかけられていたからだ。高さ1メートルほどの分厚いオリーブの板に、居酒屋で剣を振り回すキホーテが見事に浮き彫りにされており、その剣に突き刺されて天井から吊るしたブドウ酒の皮袋が破れ、ワインがしたたり落ちている。
思わず走り寄って、「これ、いくらかね」ときくと、肥った女主人はニべもなく「売り物じゃない。看板だよ」と拒絶した。そうなると、どうしても手に入れたくなる。さんざん交渉したあげく、ついに女将は折れた。そして、呆れたような顔で「あんた、ドン・キホーテみたいだね。どうやって持って行くつもりさ」ときた。
なるほど、あとさきも考えずにこんな看板をさらっていくなんて、まさしく無謀だ、と思ったが、もうあとには退けない。ぼくはそれを運送屋にかつぎ込み、日本へ送るように頼んだ。風車に突進したドン・キホーテのような気持ちになって。『ぼくのおみやげ図鑑』77ページ
あとさき考えてはいけないのです。欲しいときに手に入れるべきなんですね。とてもマネできそうもありませんが。