ダイヤモンド社刊 2415円(税込) |
「日本はコンセプトを輸入してきた。最初は中国から次に西洋から輸入した。日本の文化は、他のいかなる国とも違って知覚的だからである」(『すでに起こった未来』)
ドラッカーは、エコノミストとしてロンドンのマーチャントバンクで働いていた頃、日本画に恋をしたという。病が高じて東洋美術史を教えたこともある。
日本の文化は日本画と書を中心に発展した。演劇さえ純粋に日本のものであって、劇的というよりも絵画的である。歌舞伎はカメラとフィルムのない映画だという。
日本の風景画は日本の芸術の神髄である。風景が日本人の心をつくってきた。
日本画の風景における日本人の感覚は、神道的なものの一部である。それは欧米的な意味での宗教ではない。神社や祭礼ははるかに古く、しかも日本のすみずみに見ることができる。
ドラッカーは、人間環境としての国土に対する日本人特有の感覚は、さらに古く、さらにすみずみまで行き渡っていると見る。
日本画は空間が支配する。空間の部分が多いということではない。空間が絵の構図を規定しているということである。
「日本の近代社会の成立と経済活動の発展の根底には、日本の伝統における知覚の能力がある。これによって日本は、外国である西洋の制度や製品の本質と形態を把握し、それらを再構成することができた。日本画から見た日本について言える最も重要なことは、日本は知覚的であるということである」(『すでに起こった未来』)