子育て市場は13兆円規模、そのうち、絵本・児童書は700億~800億円ある。今後は、サービスを絵本のみから子育て全般に広げることをもくろむ。「子どもが生まれたら、絵本ナビが提供している各種のサービスを使ってもらえるようにしたい。」。現在の収益は物販7、広告3の割合だが、ウェブサイトのメディアとしての価値を更に高めることで後者を増やすことを目指しつつ、「月額課金のプレミアムサービスの割合を増やしていきたい」と考えている。

 リーマン・ショック後の苦しい時期にも、金柿はかつて勤めた大企業に戻りたいとは思わなかった。それを本人は「子どもに胸を張れる生き方がしたかった」と語った。ここで“子ども”というのは、自分の愛娘だけではなさそうだ。金柿の脳裏には、週末のおはなし会で絵本を読む彼の膝に乗っかり、肩につかまってくる、たくさんの子ども達の顔が浮かんでいたことだろう。

「『大人って、ものすごく大変だけど、ものすごく面白いぜ』と子どもたちに伝えたい。もちろん、“大きな船”に乗ったままでも、輝いていればいい。でも起業という道を選んだ私は、『そうじゃない道もあるぜ』ということを示していきたい」。

 金柿にとって起業は、いわば読み始めた絵本のようなもの。子ども相手だからこそ、途中でやめるわけにはいかない。最後まで読み通さないわけにはいかない。今、読んで聞かせているのは、きっとこんな「おはなし」だろう。

「むかしあるところに、すてきなかいしゃがありました。そこではたらくおとなたちは、まいにちがたのしくて、しかたありません。なぜなら、みんながだいすきな、えほんのおしごとをするからです。いっしょうけんめいはたらくけれど、よるはいえにかえってかぞくでごはんがたべられます。そんなかいしゃがあるなんて、しんじられないかもしれません。これは、そういうすてきなかいしゃをつくった、おじさんのおはなしです」。(文:治部れんげ)


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