イノベーションを起こす
七つの機会

 シュンペーターはイノベーションを以下のように分類しています。すなわち、1. 新しい生産物、2. 新しい生産方法、3. 新しい組織、4. 新しい販売市場、5. 新しい買いつけ先、の5つです。

 ドラッカーはシュンペーターの5分類を踏まえて、本書で「イノベーションの七つの機会」を提示します。この研究はシュンペーター没後、「1950年代半ばに始まった」(本書まえがき)と書いています。その後、大著『マネジメント』(上中下、原著1974、上田惇生訳、ダイヤモンド社、2008)の「第61章イノベーションのマネジメント」(下巻)で先行して論じ、1985年に『イノベーションと企業家精神』(初訳版、小林宏治監訳、上田惇生、佐々木実智男訳、ダイヤモンド社、1985)を出版したわけですから、シュンペーターと同じように端緒から30年経過しています(2007年版は新訳版)。

 ドラッカーはまず、イノベーションの体系を知ることが必要だとします。つまり、「変化に関わる方法論、企業家的な機会を提供してくれる典型的な変化を体系的に調べるための方法論」(15ページ)をおさえるべきだというのです。

 では、本書の第3章から第9章に詳述されている「イノベーションの七つの機会」をピックアップしてみましょう。

第一の機会 予期せぬ成功と失敗を利用する
外部の予期せぬ変化といえども、自らの事業の性格を変えてはならない。多角化ではなく展開でなければならない。

第二の機会 ギャップを探す
1. 業績ギャップ、2. 認識ギャップ、3. 価値観ギャップ、4. プロセス・ギャップ

第三の機会 ニーズを見つける
1. プロセス上のニーズ、2. 労働力上のニーズ、3. 知識上のニーズ

第四の機会 産業構造の変化を知る
変化以前の市場へのアプローチや組織や見方が正しいものでありつづけることはほとんどない。

第五の機会 人口構造の変化に着目する
予測は容易であり、リードタイムまで明らかである。

第六の機会 認識の変化をとらえる
見極めは困難、小規模かつ具体的に着手するべき。

第七の機会 新しい知識を活用する
リスクが最も大きいため、マネジメントが重要になる。(第3章-第9章から選択)