三菱UFJフィナンシャル・グループの平野信行社長が4月1日、全国銀行協会の会長に就任した。金融庁がガバナンス(企業統治)の強化策として、銀行グループに「委員会設置会社」への移行を事実上促す中で、そのあるべき姿について聞いた。 

Photo by Kazutoshi Sumitomo

――会長就任の抱負をお願いします。

 非常に長いトンネルからようやく抜け出して、明るい兆しが見え始めたこの日本の経済を、将来に向けて持続的な成長の軌道にもう一度乗せていく。それに向けて金融機関としてこの1年、最大限の努力をしたい。一言でいえばこれがテーマですね。

 それと、私どもはサービス産業でありますから、事業者の皆さまに、安全・安心で利便性の高いサービスを提供していく。また、金融システムの安定性、頑強性というのでしょうか、これも確保するようなかたちでやっていきたい。3点、挙げていますけれども、それが今年のテーマだと思っていただいて、よろしいかと思います。

――金融庁が新たな監督方針の中で、委員会設置会社への移行を促しています。そのことをどのように受け止めていますか。

 なるほど。企業にとってガバナンスの問題は非常に重要であるということは、まず間違いないと思います。そのガバナンスの使命を担うのが取締役会の制度と運用、仕組みと中身ですね、これも間違いがないと思っています。

 それともう一つ、やはり金融業界にとって、これは一般の企業も同じですけれども、重要なのは、やはり社外の知見をいかに経営に反映させていくか、いかに外に対しても開かれた事業運営、企業経営ができるか、というのが非常に重要なんだろうと考えております。

 そういう意味では、これはいくつかの形がある。現在の監査役設置会社もその形であるし、それから今回の指針の中でも例示的に示された委員会設置会社、これももう一つの選択肢として、会社法の中で定められている。それぞれに特徴があるわけですから、これをそれぞれの企業体が自社の事業にとって最も望ましい形の仕組みを選択していくということなんだろうなと思いますね。

 ただし、先ほども申し上げたように、社外の視点を意識し、かつ社外の知見に素直に耳を傾ける、そういう姿勢も当然重要なので、どちらの形を取るにしても、社外の役員を導入していくというのは「方向としては」望ましいのだと思います。

 ただし、私自身が米国の会社の社外取締役をやっていたという経験から申し上げますけども、やはり運用が大事なんですよ。