オンラインアンケートツールを提供しているサーベイモンキー。これまでマーケティングや商品開発のための消費者への調査や、メディアなどで行う世論調査というと、莫大な費用と手間、時間がかかっていた非効率なものだった。それがサーベイモンキーを利用すれば安く、短期間で、正確なデータが取得できるということで、全世界でユーザーが広がっている。ジョン・コーヘン氏はワシントンポストで長年世論調査、分析を手がけてきた調査や分析のスペシャリスト。来日に合わせて、最近日本でも話題になっている「データジャーナリズム」や日本のメディアがこれから直面する環境変化をテーマに、話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 片田江康男)
経営戦略のディレクションのほか、調査方法論の視点からサービス品質向上を担当。ビックデータ分析や新しい調査手法に関する専門家で、米国でも注目を集めている人物。ワシントンポストでは10年以上、世論調査担当として活躍。2度の米大統領選挙と4度の国会議員選挙を指揮するなど、インパクトがあり中立的な世論調査を数多く手がけた。その後、ピュー・リサーチ(PewResearch)のVPを歴任し、2014年に現職に就任。
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ジャーナリストは数字の裏を
読み取るトレーニングが必要
――ジョンさんはサーベイモンキーに入社する前、ワシントンポストで世論調査部門のトップをされていましたよね。サーベイモンキーのように簡単にアンケート調査ができるサービスが普及することは、メディアにとって大きなインパクトがあるのではと思います。アメリカのメディアはそのインパクトを日本のメディアよりも先に受けたのだと思いますが、これから、日本のメディアにはどのような変化が訪れると考えますか。
昔はメディアは独自に世論調査をしてデータを得ていました。今は簡単にデータを取ることができようになり、またそれを加工するツールも増えているので、メディアは、データを使って新しい形で読者に情報を伝えていきたいという想いが強くなっています。
しかし、メディアは集めたデータが本当に正しいか、質が高いか、信憑性が高いか、ということを見抜く力について、ジャーナリストをトレーニングしてきませんでした。今までは、聞いた話が本当に信憑性があるのか、信頼に足る情報なのかということを見抜く力が仕事上、もっとも重要だったからです。
今までのジャーナリストは“ストーリーテラー”であればよかったのですが、これからはそれだけではないということです。
私がワシントンポスト時代に社内でジャーナリストたちに言っていたことは「数字の裏に何があるのか、それを読み取りなさい」ということです。
ワシントンポストでは世論調査で設定された仮説や前提、質問項目をすべて公開しています。これを見てみると、調査の背景が読み取れます。それによって、単に数字だけではく、その背後も理解でき、結果として出てきた数字を自らが書こうとしている記事で使うべきなのか判断できるでしょう。