いろいろな人の力を「借り物競争」する
白木 私、南さんの二冊目の本『ともに戦える仲間のつくり方』がとても好きで、「一歩を踏み出したいすべての人が読むべき」と、いろいろな方に薦めています。
南 ありがとうございます。
白木 特に、「自分より優秀な人を巻き込む」というところが印象的で。何かを始めようというとき、「自分で全部やらないといけない」「自分の言うことを聞いてくれる人を集めなきゃ」と思ってしまいがちですから。
南 そうですね。ただ、僕がラッキーだったのは、いざ立ち上げようとしていたインターネット事業について、僕がいちばん詳しくなかったということ(笑)。つまり、みんな自分より優秀だったんです。普通、事業を始める人って「自分ができること」で始めるじゃないですか。
白木 そうですね。興味がある、詳しい、実績がある。たいてい、そういうところから選びますよね。
南 そうすると、自分の発想を表現しがちになるんです。もし僕が金融業界で会社を立ち上げていたら、経験もあるし土地勘もあるから、もっと口を出してしまっていたと思います。あえて知らないことを始めるというのは、ひとりよがりな自分を抑えるコツです。なぜかと言うと、誰かにやってもらわないと絶対にできないから。
白木 力を借り続けなければできないですよね。
南 多くのIT企業の創業者はITエンジニアではないですよね。頼らざるを得ないからこそ、自分も会社の中でひとつの役割分担になる。その方が絶対うまくいくと思います。
白木 私も最初のころは自分ひとりで会社を回していたので、まったくわからないことばかりでした。経営はどうするのか? 百貨店のバイヤーと出会うにはどうすればいいのか? PRやマーケティングはどうすればいいのか? ――そういう、自分にできないことをその道のプロフェッショナルに助けていただくしかなくて。人材の借り物競争、という感じでした。
南 ああ、「借り物競争」。まさにそういう感じですよね。
白木 「白木さんだからできたんじゃないか」と言われることもたくさんありますが、とんでもないです。私の右腕になってくれているデザイナーがいなければあんな素敵なジュエリーはつくれないし、ジュエリー業界歴十年以上のプロフェッショナルがいるから全店舗を統括できるし、数字を見てくれる役員がいるから安心して経営できます。みんなの力を少しずつ借りているだけなのです。
南 僕もそうです。「なぜ挑戦できたんですか?」「南さんだからできたんじゃないですか?」って聞かれることがとても多くて。白木さんと同じで、ぜんぜんそんなことないんですけどね。
あ、そういえば僕、社員に「南さんの口癖は『わからないから教えてください』だ」と言われるんですよ。
白木 それは、社員の方に対しても外部の方に対しても、ですか?
南 そうです。新入社員にも子どもにも、わからないことがあったらどんどん聞いてしまいます。何よりも「知ること」が楽しくて。自分が知ってることなんて、本当に少ししかないから。でも、たぶん人より不真面目だからすぐに聞いちゃう。
白木 不真面目?
南 本を読むより二十人の専門家に聞いた方が早いと思っていて。みんなが読んだり経験したりして解釈してくれたものを吸収できるじゃないですか。
白木 確かに(笑)。
南 誰しも、知識を伝えたいという本能があると思うんですよ。だから、知識の共有って、聞く側も聞かれた側もみんなハッピーになれると。もちろん、利用しているわけではないのですが。
白木 ええ、わかります。