プライベートエクイティ 金融最強エリートの正体#5Photo by Yoshihisa Wada

東芝メモリ(現キオクシア)や日立金属(現プロテリアル)など、これまで数々の大型買収を手掛けてきた米プライベートエクイティ(PE)ファンド、ベインキャピタル。その投資額は2006年の日本進出以来、企業価値ベースで7.6兆円に上る。PE投資の共同責任者を務める2人がメディアのインタビューに初共演し、さらなる投資加速を宣言。そして競業のKKRと争奪戦を演じた富士ソフトの「予告TOB」問題について見解を述べた。特集『プライベートエクイティ 金融最強エリートの正体』の#5で、2人のインタビューをお届けする。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

日本市場がファンドの成長をけん引
東芝メモリ買収から「投資加速」

──ベインキャピタル日本代表の杉本勇次氏が今年1月、アジア太平洋地域の責任者に昇格しました。この人事はベインキャピタルが日本市場を重視している表れと捉えていいのですか。

末包 そうですね。現時点で日本を非常に重視している事実はあります。今までの活発な活動により日本でプレゼンスを発揮できており、その成果をグローバル全体で評価してもらっているのだと思います。

西 日本は、ベイン全体の成長をけん引しているところがある。投資件数の実績もあり、日本からアジア全体に成長を拡大していこうとしているのです。

──お二人の役割分担は。

末包 私と西が日本のプライベートエクイティ(PE)全体を共同で見ていますが、2人で投資する業界を分担しています。私は製造業を含む産業材、ヘルスケア、ファイナンシャルサービスなどです。

西 私はテクノロジー領域や小売り・消費財などを中心に見ています。それぞれのセクター担当を分けながら、共同責任者として2人で話し合いながらさまざまな意思決定をしている。

──実績の話がありましたが、日本企業への累積投資額は。

末包 2006年から企業価値ベースの投資額は通算で7.6兆円です。

 うち18年に投資した東芝メモリ(現キオクシア)が2兆円、そして今年は既に買収契約公表済みが、ジャムコ、田辺三菱製薬、ヨーク・ホールディングス(HD)の3社で計1.4兆円です。

 18年以降に限れば投資額は6.5兆円であり、日本への投資を加速させていることがお分かりいただけると思います。

──今後も投資を積み増していくことになるのですか。

ベインは2025年に入り、飛行機内装材メーカーのジャムコや田辺三菱製薬、イトーヨーカ堂などを傘下に持つヨーク・ホールディングスの買収を相次いで公表した。その買収攻勢はとどまることはなく、対象業界も製造業、医薬、小売りと幅広い。彼らが次に狙うターゲットはどこか。そして人材戦略は──。次ページで明らかにする。