吉野家の中興の祖、安部修仁会長が、経営の第一線から退く。吉野家が新規事業への投資に積極的になるのか。外食業界の構造自体が大転換しそうな中、注目が集まる。
Photo by Ryosuke Shimizu
2013年12月、日本の外食業界を代表する2人の経営者が、東京・青山のジャズクラブの舞台に立っていた。
ギター演奏が得意な林芳正・農林水産大臣が主催するライブに奏者として招かれたのは、原田泳幸・日本マクドナルドホールディングス会長と、安部修仁・吉野家ホールディングス会長の2人だ。
関係者のみに告知されたこの会で演奏されたのは、ビートルズの「ゲット・バック」だった。林大臣、安部会長はギターとボーカル、原田会長はドラムを担当。それぞれが達人の域に達する腕前だけあって、なかなかの名演奏だったという。
ただ、ゲット・バックの「かつて居たところに戻ってこい」という歌の内容とは裏腹に、原田会長、安部会長の2人は、14年度に入ると相次いで、外食業界の経営の舞台から去ることを発表。原田会長は、教育事業を手掛けるベネッセホールディングスの会長兼社長に、安部会長は取締役を外れ、兼任する事業会社の社長は退任することとなった。
安部会長は“ミスター牛丼”と呼ばれる、吉野家の中興の祖だ。後任の事業会社社長には、45歳の河村泰貴ホールディングス社長が就任する。ホールディングス、事業会社共に河村氏が経営を担う。
若返りが注目されているが、もう一つ重要な点がある。かつて倒産を経験した幹部たちも安部会長の退任に合わせて去ることだ。