かつては外食の優等生だった牛丼だが、近年は苦境に陥っていた。ところが、この冬、久しぶりのヒットに恵まれ、各社は底を打ったと感じ、その勢いで消費増税を乗り切ろうとしている。

 不調にあった牛丼の逆襲が始まっている。先陣を切ったのは、吉野家だ。2013年末に始めた「牛すき鍋膳」が絶好調で、12月の既存店売上高は前年比16%増加となった。

 牛すき鍋の特徴は客の目の前で炎が揺らめいていること。固形燃料ですき焼きが盛られた鍋を温めるため、食べ終わるまで冷めない。そして、牛丼の具材が肉とタマネギとシンプルなのと対照的で、牛すき鍋には長ネギや豆腐に平打ち麺まで添えられていて豪華に見える。何より、火を使うことで、店内には香りが充満するから、新メニューを知らずに入ってきた他の客の興味も引かれる。

 半面、具材が多く固形燃料も使うため、価格は並盛で580円と、牛丼並盛の280円から300円も価格が上昇している。当初、700円で提供することも考えたが、調達などを工夫して何とかこの価格に抑えたという。

 さらに、牛丼のように提供まで数十秒というわけにはいかず、客の待ち時間が長くなる。つまり、吉野家が売りとしてきた「うまい、やすい、はやい」の三拍子のうち二つを弱めて実現した戦略的な商品といえるのだ。

 そのもくろみは当たった。振り返れば、吉野家は13年5月に牛丼並盛の値下げに踏み切り一時は客数が増えたが持続せず、営業利益予想の下方修正に追い込まれた。ところが今回は好調が持続していて、しかも価格もかなりアップしているから、決算への好影響が期待できる。

吉野家のヒットに続き、ゼンショーが運営するすき家でも牛すき鍋の提供が始まった。近年では珍しいほどのヒットな上に価格も高い
Photo by Ryosuke Shimizu
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 吉野家から遅れること2カ月、牛丼業界最大手のゼンショーが運営するすき家も、14年2月に「牛すき鍋定食」の提供を開始した。内容が似ている上に、鍋物にもかかわらず春が近づいてからの提供のため、吉野家の成功を見てあわてて追随したのではないか、と勘繰られそうだが、「吉野家とは関係なく、以前から考えていた」(ゼンショー関係者)という。

 すき家も吉野家同様に、こだわりを見せている。同社の通常の牛丼が米国産とオーストラリア産の牛肉をブレンドしているのに対し、牛すき鍋は米国産のみとし、牛丼に比べ、肉の厚みも増した。