9月1日午後9時半、福田首相が記者会見で辞任を発表した。しかし、彼は、ついこの間に内閣改造を行ったばかりだし、注目されていた経済対策を、つい先週末の8月29日に発表したばかりだった。予定通りということはあるまい。嫌になったのか、腹を立てたのか、仕方がなかったのか、何かよほどまずい事情があったのか、おそらくは、これらの中の複数の要因が該当するのだろうが、何はともあれ、福田首相は辞任する。残された経済対策はどうなるのか。
率直に言って、この総合経済対策は、未完成品だ。最大の目玉であるはずの定額減税を総論として決めておきながら、これを実施するはずの内閣総理大臣が辞任してしまうのだ。経済対策の発表で一応の区切りがついた、という旨の、福田首相の辞任会見での説明には明らかに無理がある。
しかし、未完成でも何でも、政治的には「出したものを引っ込める」ことは出来ないだろうから、経済対策の要点を見ておこう。
事業規模、つまり対策で動くお金の規模という意味では、11兆7000億円と、10兆円を超える額となったが、財政支出として今年度補正予算で賄うもの(対策に使う国費)に限ると、1兆8000億円にすぎない。
その内訳を見ると、農林水産業の強化、学校の耐震強化といった特定の産業に対する支出と、所謂“箱もの”に対する支出が実は9000億円。高齢者医療対策の4000億円のように、まとまった支出が行われる項目もあるが、運送業の燃料費高騰に対応した高速道路料金の値下げや、太陽光発電への補助金など、結局、補正予算に名を借りて、官僚がまたあちこちに資源配分するようなものになってしまっている。
本来、総合経済対策の目玉であるべき減税も、定額減税を年度内に実施することまでは方針として決めたものの、規模や具体的な実施方式については、年末の税制改正論議の中で具体化していくと、結論は先送りされてしまった。むしろ、定額控除方式による所得税と個人住民税の減税を「単年度の措置」として行うとはっきり書いたことで、経済的効果は期待薄なものにされている。
減税は方向として正しいが、単年度の措置として行うだけでは、効果が乏しいだろう。