世界のマーケットが注目する
「ジャクソンホール経済シンポジウム」:
珍しく事前に発表されたテーマ

 今月4日、米国カンザスシティ連銀は、ジャクソンホール(ワイオミング州)で開かれる年次経済シンポジウム(今月21~23日)の総合テーマを、「労働市場の力学(動態)の再評価」(Re-Evaluating Labor Market Dynamics)と発表した。1978年に始まったこのシンポジウムは、中央銀行、政策関係者、学者が集まって、今後重要性が増すテーマについて集中的に議論する場である。

 金融危機以降の本シンポジウムでは、米国の金融政策の大きな転換が示されることがあった。たとえば2010年と12年、当時のバーナンキFRB議長はここで新たな債券購入プログラムの始まりを示唆した。

 今回も、日本時間22日午後11時にイエレンFRB議長が講演する。こうした経緯もあり、今や世界中のマーケットが注目するイベントとなった。

 なお、同シンポジウムのテーマが今回のように事前に公表されることは珍しい。それほど、今後の金融政策運営において、労働市場の力学の解明が大きなテーマになるということを周知させたかったのであろう。

労働市場の力学の再評価:
日本の金融政策にとっても重要なテーマ

 労働市場の力学の解明は、日本にとっても重要なテーマだ。「消費者物価指数(CPI)前年比+2%」という目標が安定的かつ持続的に実現するには、実質賃金(=名目賃金÷CPI)の上昇が欠かせない(以下、「実質」とは物価変動を除いたという意味)。つまり、名目賃金がCPIよりも速く上がることが求められる。

 しかし、足元にかけてこの条件が満たされていないことは、実質雇用者所得(=実質賃金×雇用者数)の前年割れという形で、すでに表れている(図表1参照)。しかも、消費税率引き上げの前から前年比マイナスに転じている。

注:1.実質雇用者所得=雇用者数×一人当たり名目賃金÷消費者物価
  2.ここでの消費者物価は持ち家の帰属家賃を除く総合
出所:厚生労働省『毎月勤労統計』、総務省『労働力調査』、同『消費者物価指数』よりバークレイズ証券作成
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