CFOに求められるスキル

 CFOは、自社の事業についての理解はもちろん、各事業部との信頼関係も非常に重要です。信頼関係がなければ、事業部がファイナンスからのアドバイスを受け入れ、それに基づいて意思決定をすることはないでしょう。

 予算策定で本社が事業部に割り当てた数字をそのまま現場に伝えるだけのCFOは、その任務を果たしたとはいえません。どのように目標を達成するかを事業部とともに考える、本社からの無理な要求に対しては交渉の前面に立ち数字を変えてもらう(その場合は必ず分析に基づいた正当な根拠が必要になります)。「意味のあるストレッチ目標(数値)」をつくる主体がCFOなのです。

 事業部側のマネジメントがファイナンスに精通しているとは限りません。時にはファイナンスの考え方を専門用語を使わずに事業部に説明することも必要になります。さらには、CFOは過去の数字を分析するだけでなく、事業内容やマーケットを理解し、未来の戦略をつくるアドバイスもできなければ、事業部に信頼されることはありません。

 財務分析によって、どこにリソースを集中すべきか、どの投資を見送るべきかなど、事業戦略に必要な視点が見えてきます。CFOの役割は、そのような分析および提言をCEOや事業部長などに手渡して終わりではありません。財務分析に基づいた戦略やアクションが遂行されるよう、事業部の後押しをすることもまた、重要な責務です。

 CFOには、予定された売上や利益を達成する責任があります。どんなにしっかりとした分析ができても、事業部に対する影響力を持たなければ、責任を全うすることはできません。変革リーダーとして、企業の新陳代謝を促す能力もCFOに求められるのです。

 CFOは、ストーリー・テラー(物語の語り手)でなければなりません。財務資料(プレゼン資料)は数字の羅列ではなく、各ページに前後関係があり、ストーリーがあり、伝えたいことがはっきりしていなければなりません。

 日本企業が直面している問題の一つは、環境変化に対する適応のスピードです。過去の成功体験に引きずられて、迅速な方向転換ができていないのではないでしょうか。方向転換のためには、スピード感のある経営判断が必要です。財務数値ベースの意思決定は迅速な経営判断を可能にします。

 グローバル企業のアプローチのすべてが正しいわけではありませんし、日本特有の強みは活かすべきです。そのためにも、単なる専門家ではない、戦略的意思決定に貢献する財務のプロの育成が急がれます。それが、日本企業再生の屋台骨を太くするはずです。