日本の教師は忙し過ぎる――。 こんな不満が、世の中の教育関係者から噴出している。体罰・いじめ問題における教師バッシング、膨大な雑務、モンスターペアレントへの対応、さらには職場いじめなど、教師を取り巻く環境は厳しい。激務に忙殺されて授業に自信が持てない教師、カウンセリングに駆け込む教師も少なくないという。かつては「聖職」と呼ばれた彼らを疲弊させる構造要因が解消されなければ、日本の教育現場に光は見えない。現実の教師たちはどんな苦悩を抱え、逆境のなかでどんなやり甲斐を追い求めているのか。「教師大疲労時代」の今を追った。(取材・文/プレスラボ・小川たまか)
かつての聖職はワリの合わない職業に?
国際調査が物語る「自信の持てない教師像」
日本の教師は忙し過ぎる――。
こんな不満が、世の中の教育関係者から噴出している。かつて「聖職」と言われた教師という職業を、情熱をもって目指す人たちは今の時代にも多いが、一方で「教師は大変そう」「ワリに合わなそう」と評価する風潮も、世の中に確実に広まっている。
体罰・いじめ問題における教師バッシング、恒常的な激務、モンスターペアレント対策など、確かに教師を取り巻く状況は決してよくはない。あまりの辛さに、精神面に問題を抱え、カウンセリングに駆け込む教師も少なくないという。
実際に、日本の教師を取り巻く現状はどれほど厳しいのかを、データで見てみよう。OECDが6月に発表した「国際教員指導環境調査」の結果は、なかなか衝撃的なものだった。調査はアメリカ、シンガポール、オーストラリアなど34ヵ国を中心に行われたもの。日本では2013年2月中旬~3月中旬に行われ、全国の中学校192校(国公立90%、私立10%)から各校約20名(全体で校長192名、教員3521名)が回答した。
まず、「教育を持つ教員や有能な要員の不足」「支援職員の不足」などが、質の高い指導を行う上で「非常に妨げになっている」「いくらか妨げになっている」と回答した校長がいる学校に所属する教員の割合は、日本は70%以上。参加国平均と比べて、30~40%近く高かった。
また、1週間あたりの仕事時間の合計は53.9時間で、参加国平均の38.3時間を大きく上回り最長だった。しかし、そのうち「指導(授業)に使った時間」は17.7時間と、平均の19.3時間を下回った。