ゴーン体制下で復活した「日産GT-R」は、グローバルで一貫してマスマーケティングを行っていない。デビュー前から各地にGT-Rの車両自体を出没させ、写真を撮らせ拡散させることでファンの間での興味を引き、2007年の復活デビュー後は毎年ニュルブルクリンクにGT-Rを持ち込み、現在まで量産市販車としての最速ラップタイムを更新し続けている。2008年にはポルシェからGT-Rのラップタイムに対して疑義が呈されたが、翌2009年にはこれを逆手にとって世界中から多数のメディアを証人として招いた上で、前年以上のラップタイムをたたき出してその高性能を証明して見せたというエピソードもある。

 毎年更新されるGT-Rのラップタイムや走行動画、それをめぐる競合メーカーとの戦いを、ファンや顧客は自発的に検索して接触し、楽しみ、驚き、憧れを抱く。ニュルブルクリンクでのGT-Rのラップタイムは、言語の壁を越えて理解できる上に、シンプルなメッセージゆえの王道感・本格感、また20年以上に及ぶ一貫性や伝統までを、世界中のファンに伝える役割を果たしている。日産GT-Rは、その商品と高い性能そのものを、どれだけ広告を打つよりも雄弁に伝えられるコンテンツとして仕立て、ファンや顧客がこのコンテンツに触れることで、GT-Rに憧れ、ひいては日産への信頼を増していく構造となっている。

 伝統やエピソード、そして日産の情熱を含め、商品そのものに価値を語らせるコンテンツが、言語の壁を超えた迫力あるメッセージとなることを日産GT-Rのケースは教えてくれている。そして、そのコンテンツはグローバルの顧客の心を捉え続けている。

リアルとデジタルを跨ぐコンテンツを通じてブランドの価値を伝える
――B&Qのケーススタディ

「ドリルを買う人は、ドリルが欲しいのではない。穴を開けたいのだ」という有名な格言がある。そこでまさに「穴を開けたくなる」コンテンツを提供しているのが、ヨーロッパ最大のDIYチェーンである「B&Q」である。その中身を見てみよう。

 まず、デジタルマガジンではDIYによってもたらされる新しくクリーンな生活空間を紹介し、ウェブサイトでは商品や店舗の情報だけでなくDIYについてのサポートやアドバイスを提供している。だが、実際にDIYを始めるにはこうしたベーシックな情報だけでは心許ないだろう。そこでB&Qは次のような取り組みを展開している。

「日本ブランド」は顧客との絆を築けているか?<br />――グローバルに向けたコンテンツマーケティング戦略

(1)より詳細に作業の手順を学習できるよう、YouTube上にハウツー動画を提供。

(2)店舗では定期的なインストアトレーニングを開催。顧客はYouTubeで学んだ知見に基づき、練習の機会を得られる。

(3)FacebookではエキスパートとのQ&Aセッションを設けて疑問の解決をサポート。

(4)コミュニティサイトでは、なんとDIYツールの貸し借りを近所に住む顧客同士が行う――リアルの世界でも顧客が繋がることを推奨しているのである。