関西出身。バブル最盛期に証券会社で働く。その後、米国留学を経て外資系企業に勤務。2010年末に早期リタイヤ後は、「働かない生活」を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦などを含め、これまでに約50ヵ国を旅している。2005年から書き始めた「Chikirinの日記」は、政治・経済からメディア、世代論まで、幅広いテーマを独自の切り口で語り、現在、日本で最も多くの支持を得るブログとなっている。著書に『ゆるく考えよう』『自分のアタマで考えよう』『未来の働き方を考えよう』など。
ちきりん 他にもぜひ先生にお伺いしたいことがあります。ひとつは診療科による医師の需給バランスの問題です。中途半端な形で市場原理が持ち込まれたからかなと思っているのですが、今の制度だと、負担の大きい救急医療や産婦人科が足りないのに、医師を増やしても、増えるのは皮膚科と眼科ばかり、みたいなことが起こりえますよね。医師の全体数を増やすのではなく、必要な分野の医者を増やすような、インセンティブの付け方はあるのでしょうか。
北原 中途半端というより、ほとんど市場原理に任せてないから、「儲かりそうな○○科」というような選び方をする人が生き残ってしまうんです。市場原理に任せれば当然、淘汰は働きます。救命救急医は仕事が厳しく、訴訟を起こされる可能性も高いのに収入は変わりません。だから誰もやりたがらない。医療をビジネスとしてとらえ、市場原理を働かせていくしか方法はないと思います。
医療改革にはマイナンバーが必要?
日本の病院がIT化に乗り遅れたワケ
ちきりん 先生はご著書の中でも、国民皆保険を全廃すべしと言われています。時代にそぐわなくなってきていると。ならば、今の時代にあった公的保険の形とは、どのようなものなのでしょうか?
北原 医療単体で物事を考えることは、できないと思うんです。だから、まずは国民総背番号制(マイナンバー)を導入すべきですね。出生登録を出したときにマイナンバーが発行され、それに基づいて生活を紐付けていく。学校に入る、アルバイトをする、株式を売買するといったことすべてにマイナンバーが必要となると、収入が捕捉できます。そうすれば将来の生活リスクが分かり警告を発することもできますし、医療を含めて最低限の生活を送る補助を出すこともできる。
あともう一つ、医療に関して面白い変化が起きます。保険診療をする病院に対しては、診察をしたときの診断名、処方箋、画像データの入力を義務づけると、誤診の記録が残ります。そうすると、自信のない病院は検査ができなくなります。もちろん、災害が起きたときには、持病を持っている患者に適切な処置ができますし、ビックデータを活用すれば医療が進歩するかもしれない。
ちきりん マイナンバーは、医療分野だけでなく、福祉、教育、金融、納税と、あらゆる分野で鍵となるインフラ制度ですよね。