そして第3に、国や部門を越えた相互理解です。業績管理のためには、時として厳しい判断を下さなければならないことがあります。「なぜ、自分の国だけ不利な判断がなされるのか」といった不満を持たれてしまうと、ベストな結果を出すためのコミットメントを得ることはできません。厳しい判断がなされても、納得できるものであればがんばれるものです。

 同じことは、従業員に対しても言えます。会社が決めたことだからやれ、という一方的な命令では従業員はベストを尽くしません。従業員に対しては、全社的決定を浸透させるコミュニケーションが必要です。その際、命令を伝えるだけでなく、会社の戦略、目標、現状を交えて、ビジネスをストーリとして簡潔にわかるようにしなくてはなりません。

 最後に、迅速に全社の状況を把握できる仕組みも必須です。会社の状況が数カ月後でないと把握できないようでは、適時適切な判断はできません。早い段階で検証できれば、解決のための選択肢は増えて、より効果の高い解決策を選択できます。

グローバル経営で広がる
日本企業の可能性

 このように、グローバル経営で重要なのは、お互いの意図を伝え合える成熟した対話力、ビジネスを分かり合える理解力、同じ土俵で話ができる共通の価値観です。

 こう言うと、「最先端の優れた経営手法で有名なグローバル企業でソフト面が重要?」という疑問を持つ方もいるでしょう。確かに手法や仕組みは重要ですが、所詮「やりたいことをやりやすくする道具」であって、道具を使う人たちの理解や共感がなければ本来の機能を発揮し得ません。「グローバルでビジネスを展開するためには、ハード以上にソフトが重要」というのが外資系で働いてきた者としての実感なのです。法律があっても、人々の社会に対する責任感や帰属感がなければ、有効に機能しないのと同じです。

 残念ながら、日本は、統合されたグローバル企業を作り上げることを得意としていません。対話を通して、しかも英語で、お互いの理解を深めることが苦手だからだと思います。しかしながら、グローバル化が圧倒的な競争優位を持つ中、これは避けて通れない道です。

 1プラス1が3になるようなグローバル経営を、暗黙知を明示化することで成し遂げられれば、日本企業の可能性はさらに広がります。そのためには、さまざまな企業で、経営陣の意図を明確にすると共に、グローバルに対話力のある人材を育てる、採用することが鍵となってくるのではないでしょうか。