10月31日の黒田日銀の追加金融緩和と、まるで足並みをそろえたかのようにGPIFのポートフォリオ(運用資産割合)の見直しが発表された。いわばこの「ダブルバズーカ砲」で、株価は急騰。「下値の岩盤は固い」と、株式市場関係者の表情は明るい。では、この見直しによって、GPIFの国内株式の買い余力はどのくらい増えると推測されるのだろうか。

公的年金の管理・運用を担当

 そもそも、株価が乱高下するたびに注目されるGPIFとは何者か。

 その正式名称は、年金積立金管理運用独立行政法人、英文名はGovernment Pension Investment Fund、いずれにしてもやたらと長い。そのためか、英文名を略してGPIFと呼ばれることが多い。

 GPIFのホームページの説明によればその役割は「年金積立金管理運用独立行政法人は厚生労働大臣から寄託を受け、年金積立金の管理・運用を行います。そして、その収益を国庫に納付することにより、厚生年金保険事業及び国民年金事業の運営の安定に資することを目的としています」ということになる。名は体を表すの通り、政府からの寄託を受けて、国民が収める厚生年金・国民年金という公的年金の保険料を、管理・運用する機関だ。

 日本の公的年金は、現役世代の保険料で老齢者世代の給付を賄う「賦課方式」を採っている。このため「積立方式」と違い、保険料総額と給付総額が見合っていれば、本来なら余剰資金は残らないはずだが、保険料の納付と支払い時期のずれなどによって、剰余金が生じる。その額はGPIFの運用資産額だけで、127兆円(表参照)にも達する世界でも屈指の規模を誇る「機関投資家」だ。

期待ほど株式の買い余力は大きくない

 それでは、今回の見直しによって、株式の買い余力はどのくらい増えるのだろうか。

 そもそもGPIFは「長期的に維持すべき資産構成割合(ポートフォリオ)を定め、これを適切に管理するなど、安全かつ効率的な運用に努めること」を、運用の基本方針としている。 

 昨年11月には、伊藤隆敏東京大学大学院教授が座長を務める「公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議」が、国内債券を中心とする公的年金のポートフォリオの見直しが必要だとする最終報告を取りまとめていた。今回のポートフィリオの見直しは、この報告を受けて行われた。

 これまでの伊藤座長の発言などから、株式市場では、株式の資産構成割合は20±5%程度になるのではないかというのが、大方の予想だった。それだけに、発表された25%±9%は予想を大きく上回るサプライズだった(表参照)。

(注)GPIFホームページ資料より編集部作成。
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