創続総合研究所

良かれと思った下手な遺言が
紛争のタネになる

 こうした相続人同士の争いを避けるための方法として、遺言書が推奨される。遺言書には三つの方式があり、一定の形式を満たすことが不可欠だが、遺産分割において法的な効力があり、被相続人の意思を示すことにもなる。

 しかし、実際には遺言書がむしろ相続人間の争いのもとになることが少なくない。Aさんの母親が利用した公正証書遺言の場合、公証人が遺言書作成に関わるが、チェックするのは形式が法律の条件をクリアしているかだけであり、内容については何のアドバイスもないのが普通だ。そのため、例えばAさんのように、遺産分割の割合だけを指定しているケースがよくある。現金や株式などであれば問題はないが、不動産など分けにくい資産については紛糾しやすい。

 また、遺産の一部のみについて指定する「一部遺言」では、他の資産をどう分けるかが問題になる。他の資産は遺言のある資産と切り離して法定相続分通りにするのか、遺言で指定された資産は指定された相続人が相続するが、全体としては法定相続分に従って分けるのか、どちらとも取れる。

 さらに、いくら有効な遺言書であっても、一定の法定相続人には遺留分が認められており、すべて被相続人の意思通りにできるわけではない。

 そのほか、遺言でよく問題になるのは、遺言執行人を決めていないことだ。遺言書の内容に沿って遺産を分割するにしても、いろいろ手続きがいる。それを誰がするのか。遺言で不利な分割になった相続人は往々にして非協力的になる。弁護士や税理士など第三者の専門家を指定しておく方がいい。

中途半端な付言事項
相続トラブルを拡大する

 遺言書では、「付言事項」で被相続人の意思や考えを述べるのがいいという話を聞くが、これも逆効果になることがある。付言事項で名前が出てこない相続人は間違いなく心証を悪くする。「どうせ私なんてどうでもいいんだ」と感じ、いろいろ権利を主張し始める。残された相続人全員が納得するような付言事項は簡単に書けるものではない。中途半端な付言事項は書かない方が無難だ。

 最近はやりのエンディングノートも同じである。身内であっても相性や好き嫌いがある。特定の親族についての記述が多いくらいならいいが、「あの子はしっかりしている」「この子は駄目」といったことが書いてあると、相続トラブルの火に油を注ぐようなものだ。

 遺言書を書くなら、相続人同士はもちろん、関係者に遺恨のタネを残さないように気を配るべきである。また、遺産分割の方法や内容については、できるだけ具体的に書くことが必要だ。本人の意思を反映しながら、紛争のタネとならない内容に遺言をまとめ上げるのは大変難しい。ダイヤモンドQ編集部としては、詳しい専門家に相談することをおすすめする。

  • 1
  • 2

創続総合研究所 特集TOPに戻る

SPECIAL TOPICS


失敗に学ぶ相続対策byダイヤモンドQ

2015年から相続税が増税されるため、「相続対策」をうたった書籍や雑誌、セミナーが大盛況だ。しかし、安易な対策には思わぬ落とし穴が潜んでいる。遺言、相続時精算課税制度、子ども名義の預金、二世帯住宅などを活用する際に陥りがちな失敗ケースを題材にして、相続の鉄則を学んでいく。

「失敗に学ぶ相続対策byダイヤモンドQ」

⇒バックナンバー一覧