ダイヤモンド社刊 2400円(税別) |
「自明の理とされてきたことのほとんどがもはや現実と合わなくなり、現実の仕事や生活の方が非現実的な感じを与えている」(『未来企業』)
ドラッカーは「世界は実際の姿よりも誇大な、あるいは定形というもののない一連のメディアイベントに分解してしまったかのようである」という。膨大な日々のニュース、朝刊夕刊に対するわれわれの姿勢が、すでにこの「メディアイベント」であるのだ。
世界の動きどころか、近代合理主義の下で日々着実に進歩してきた、先進国の政治と行政さえ、大混乱の渦中、よく言って大転換の渦中にある。
ドラッカーは「今日の混乱の原因は、われわれが1965年から73年の間のどこかで、次の世紀への境界を越え、過去1世紀ないしは2世紀にわたって政治を形作ってきた信条、公約、権力構造が時代遅れになったことにある」と指摘する。
つまるところ問題は、18世紀以来、政治の世界において支配的だった集団的な行動による進歩への信仰、要は自明の理とされてきた「社会による社会の救済」なる信条が、根底から打ち砕かれたことにある。
新しい答えが何かはわからない。だが、連日のメディアイベントのおかげで、われわれは次の世紀への境界を越えたこと、何事であれ柔軟であるべきことだけは学びつつあるようだ。
「転換期にあって最も危険なことは、馴染みの現実を基に考えを定めることである」(『未来企業』)