製造業にとって、伝統工芸は出自が同じだけではなく、ブランディングの一環として見ればパートナーでもあるのだ。「技能」と寄り添うようにして成長を続けてきた製造業。その「技能」や「技術」を伝承し続けてきたからこそ、事業運営を続けられている。社会には受け継ぎ続けるべき「技能」や「技術」が多数存在する。

 製造業は、一肌脱ぐ時期に来ているのではないか。この国の「技能」と「技術」の存続と発展に貢献するという、広い視座を持とうではないか。そう、製造業とは文化的事業でもあるのだ。

製造業の「技能」「技術」は
実は農業の発展にも一役買う

 では、製造業が日本のために一肌脱げる「技能」や「技術」とは何だろうか。意外かもしれないが、製造業のコンセプトをあてはめて考えることで、今後発展が期待できる産業の1つに「農業」がある。

「松本さん、トマトの甘さをコントロールする秘訣があるんだよ」

 真っ黒に畑焼けしたおじさんが、笑顔で説明してくれる。

「毎日の温度と湿度を測定してみると、傾向がわかるんだ。特に土の乾燥度がポイントだね。実がなってから水をやり過ぎると、味がぼやけるし水っぽくなるんだよ」

「なんで、そんなことわかったんですか? 勉強したんですか?」

「成型と一緒だよ。その日の気温と湿度で成形条件を調整するだろ。同じだよ」

 筆者にとっては慧眼であった。農業は製造業だったんだ!

 筆者が代表を務めるO2では、「はなえん」という農園を営んでいる。これは小さなテストだ。製造業で行われたように、ベテランの「野菜の作り手」のノウハウを可視化すれば、野菜つくりの素人でもベテラン同様の美味しい野菜を短期間でつくれるようになるのではないか。そう思って始めたものだ。