近年のスイスのインフレ率は、若干のデフレか0%近辺で推移してきた。2012年はマイナス0.7%、13年はマイナス0.2%だった。同国の中央銀行であるスイス国立銀行(SNB)の予想では14年は0%、15年はマイナス0.1%だ。
SNBのインフレ目標は「2%未満」である。だが、同行は日本銀行のようにインフレ率を2%に引き上げようとはしていない。デフレの中でもスイス経済は成長してきたからだ。SNBは12月の月報の中で、2.7%の伸びを示した14年7~9月期の実質GDPを「力強い成長」と評した。
一方、マイナス成長だった同時期の日本に関しては「急速な景気回復への希望は失望となった」と描写している。
先日、SNBは1月22日からマイナス金利政策を導入すると発表した。中途半端な日から開始されるのは、その日が欧州中央銀行(ECB)理事会だからである。もしそこで量的緩和策が決定されると、資金がユーロ圏から流れてきてスイスフランに上昇圧力が加わる可能性がある。SNBはそれを和らげようとしているのだ。
ただし、同行は、民間銀行の超過準備にマイナス金利を課すことで、彼らが融資を増やす効果は期待していない。マイナス金利政策を採用した国で、そういった効果は確認できていないことに加えて、スイスでは住宅ローンなど銀行の融資は高い伸び率にあり、むしろ過熱が懸念されているからだ。
なぜインフレ率が低くてもスイス経済は日本と違って停滞しないのだろうか。最大の違いは、人口増加にあると思われる。特に生産年齢人口(15~64歳)の差は顕著だ。国連推計では、スイスは1990年から40年までの50年間で36%増加する(日本は28%減少)。現役世代がそれだけ増加すれば住宅需要は常に強く消費も底堅い。