仕事の資源の
向上がカギ

 産業保健とマネジメントとが協調するためには、共通した目標が必要です。本稿ではそのために、前回前々回 でも触れられた「ワーク・エンゲイジメント」に注目します。

 ワーク・エンゲイジメントとは、仕事から活力を得て「いきいき」とした状態であり、「活力」「熱意」「没頭」の3つの要素から構成されます。エンゲイジメントの高い従業員は、心身の健康が良好で、生産性も高いことが分かっています。

 では、どうしたらワーク・エンゲイジメントは高められるのでしょうか。
その鍵となるのが「仕事の資源」です。

 仕事の資源とは、「仕事のストレスを軽減し、個人の成長、学習、発達を促す働きを持つ要因」です。いわば、仕事や組織のもつ強みともいえ、以下の3つの水準に分けることができます。

○作業や課題に関するもの(裁量権、仕事の意義など)
○チームや人間関係に関するもの(上司や同僚の支援など)
○組織のあり方に関するもの(経営陣との意思疎通など)

 それぞれの資源が充実するほどワーク・エンゲイジメントは高まり、その結果、健康や生産性の向上につながります。

 図表は、「仕事の要求度-資源モデル(Job Demands-Resource model: JD-R モデル)」といわれるもので、「動機づけプロセス」と「健康障害プロセス」の2つのプロセスから構成されています。

 上で述べた仕事の資源→ワーク・エンゲイジメント→健康・組織アウトカムの流れは、「動機づけプロセス」といわれ、図表の下半分に描かれています。

 一方、仕事の要求度(仕事のストレス要因)→ストレス反応→健康・組織アウトカムの流れは「健康障害プロセス」といわれ、図表の上半分に描かれています。

 

 従来のメンタルヘルス対策では、この「健康障害プロセス」に注目し、仕事の要求度によって生じたストレス反応を低減させ、健康障害を防ぐことに専念していたといえるでしょう。

 このように、「仕事の要求度-資源モデル」では、「動機づけプロセス」と「健康障害プロセス」の2つのプロセスに注目している点に特徴がありますが、もう1つの特徴は、仕事の資源の機能を重視している点にあります。

 仕事の資源の向上が、ワーク・エンゲイジメントの向上だけでなく、ストレス反応の低減にもつながると考えているのです。

 つまり、仕事の資源を充実させることが、健康の増進と生産性の向上とを両立させるカギになるといえるのです。