「世界のトップ1%が所有する富は、2016年にボトム99%が所有する富を上回るもよう」「世界のボトム50%(14年は約36億人)が所有する富と同額を保有するトップ億万長者の人数は80人だった(10年は388人)」。スイスで1月下旬に行われたダボス会議において、国際協力団体のオックスファムはそう報告した。

経済学者トマ・ピケティ氏が格差問題について書いた『21世紀の資本』は世界中で話題を呼んでいる
Photo:Ullstein bild/アフロ

 また、米シンクタンク、経済政策研究所(EPI)は、カリフォルニア大学バークレー校のエマニュエル・サエズ教授らの研究を基に、09~12年の景気回復局面で生じた米国での所得増加の95%が、トップ1%の高額所得者に属していたと発表した。ニューヨーク州やカリフォルニア州など17州では同期間の所得増加の全てがトップ1%によるものだったという。

 トップ1%へ入るのに必要な年収を州別に見ると、金融産業(ヘッジファンドを含む)で働く人が多い地域は高水準だと分かる。コネティカット州68万ドル、ニュージャージー州54万ドル、ニューヨーク州51万ドルだ。それらは全米で屈指の高さである。対照的に最下位はニューメキシコ州の24万ドルだった。

 資産や所得の格差が広がってきている長期的な理由には、税制などの制度要因、グローバリゼーションやITの進展などが考えられる。それに加えて、金融危機以降の局面でいえば先進国の量的緩和策(QE)の影響も大きいだろう。QEは資産価格を押し上げてきたが、株や不動産をあまり持たない低中所得層は恩恵を被りにくい。

 欧州中央銀行(ECB)も1月22日に“QEクラブ”へ新たに加わった。米連邦準備制度理事会(FRB)とイングランド銀行(BOE)はさらなるバランスシート(BS)拡大のための債券買い入れは終えているものの、膨張したBSを維持するための買い入れは続いている。