2月6日、労働政策審議会の分科会が開かれ、働いた時間ではなく、成果に応じて賃金を決める「脱時間給(いわゆるホワイトカラー・エグゼンプション)」制度の骨格がほぼ固まった。今国会に労働基準法の改正案が提出される見通しで、国会の審議を経て、早ければ2016年4月からの導入が予定されている。

「脱時間給」制度は
高度プロフェッショナルから

 まず、「脱時間給」制度(脱時間であるから、残業代も深夜・休日手当も支給されない)の内容を見てみよう。対象は年収1075万円以上の高度プロフェッショナル(専門職)で、給与所得者の約4%を占めるという。1075万円の根拠は、「平均給与額の3倍(約940万円)を相当程度上回る」という基準を設けたからである。

 高度プロフェッショナルのイメージは、ディーラー、アナリスト、金融商品開発、コンサル、研究開発職などが挙げられている。また、過重労働を防止する観点から、本人の同意を条件とし、導入企業は、(1)在社時間などに上限を設ける、(2)終業から翌日の始業までに一定時間を空ける、(3)年間104日以上の休日を取得させる、のうちいずれかを選択して実施しなければならないものとされている。

 ところで、賃金は働いた時間ではなく、成果に応じて決められるべきだという考え方は、極論すれば、古今東西、普遍的なものではないだろうか。生命保険のセールスの給与は成果にスライドしており、プロスポーツ選手の契約(年棒)も成果に応じて上下に変動するのが一般的である。ホワイトカラーについても、期初に上司と面談して仕事の目標(成果)を相互に確認した上で、期末に目標(成果)達成度合をやはり相互に確認(評価)して給与を上下動させる仕組がグローバル基準となっているので、プロスポーツ選手と実は大差がない。

「賃金は成果に応じて」という大原則に抵触するのは、実は年功序列型賃金である。これは、勤続年数に応じて労働者の能力(生産性)が増す≒成果も大きくなる(はず)という考え方に立脚しているが、この仮説を合理的に裏付けた論文や研究結果は寡聞にして知らない。事実がそうでないことは、生命保険のセールスやプロスポーツ選手の成果を見れば一目瞭然であろう。

 つまり、「賃金は成果に応じて」という考え方には何ら問題がないのである。グローバルに見れば同一労働(≒同一成果)同一賃金が基準となっているが、けだし、当然であろう。一週間50時間働き続けても1冊のベストセラーも企画できない編集者と、一週間10時間しか働かないがベストセラーを連発する編集者のどちらを厚く処遇すべきかは、論じるまでもないだろう。