米国議員の間に、通貨安誘導を行っている国(日本もそうみられている)と環太平洋経済連携協定(TPP)等の交渉を進めるべきではない、という主張が現れている。米国の労働者に大きな不利益をもたらす恐れがあると彼らは警戒している。
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しかし、ジャネット・イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、2月24日の議会証言で通貨安競争の議論から距離を取った。「通貨操作を行っている国との貿易協定を制限するという制度を、私は非常に懸念している」。
イエレンは、中央銀行が国内経済のために実施した金融政策が自国通貨を安くすることはあるが、それを他国に禁じることは良くない、との趣旨の説明を行った。巡り巡ってFRBの政策の自由度を損ねる恐れがあるからだろう。
FRBは公式には自らが実施してきた量的緩和策はドル安を意図していないと言い続けている。しかし、ドル安が米経済をサポートしたのは事実。このため、日本銀行や欧州中央銀行(ECB)など多くの国が同様に、金融緩和策で自国通貨を下落させてきたことを正面否定はしたくないようだ。
ただ、他国の金融緩和で生じたドル高はイエレンに悩ましさも与えている。今回の議会証言で彼女が早期の利上げに慎重なスタンスを示した理由の一つはそこにある。
1月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨にも、ドル高が米経済に与える悪影響と、海外投資家の米国債購入で長期金利が低下する緩和効果のどちらが大きいか、今は判断がつきにくいとの議論が載っていた。また、ドル高に伴うインフレ率低下は利上げを急ぐ必要性を低下させている。