もう一つは「利益」。常に開発投資をしていくので高い利益を得ることを良しとする文化でなければ駄目だと。お客さまが製品やサービスに価値を認めなければ、利益は低くなるわけですから、お客さまからその価値を認めていただくことによって高い利益が得られることに対してプライド持たなくてはいけないと話をしました。基本的にはそれが今でもコアにあります。

【経営の時間軸】
「シリコンサイクル」を乗り切るため、最低でも10年先を見る

松江 東さんは、どのぐらい先の時間軸を見て経営されているのかに興味があります。技術革新の流れや投資するにしても、ロングレンジでものを見ないとリスクは取れないと思います。

 私たちが属している半導体業界は、よく「シリコンサイクル」と言いますが、景気の山と谷の波が非常に激しいのが特徴です。技術革新も3~4年おきに起きる。プレイヤーの変遷も激しい。

 以前は、だいたい同じ技術の延長線でいくので、4~5年先をお客さまと議論していましたが、今は最低10年は見ないといけないですね。可能性の高い新しい技術の芽ができて、課題にぶつかって、それをどうやって解決したらいいかを考えていく。それを何回も繰り返していくわけです。

 私たちが今、東北大学とやっているMRAM(磁気抵抗メモリ)の開発は、当初10年、20年先の技術と言われていましたが、このところ急に数年先の話になっています。ある程度、早い段階で手掛けていないといけないわけです。一方、技術がものになって本当に広がっていくまでの期間は「死の谷」とよく言いますけど、「これは駄目だな」と思ったら、早くやめたほうがいいですね。

松江 東さんだけでなく、技術者や現場も同じように先々を見る意識がないと駄目ですよね。

 もちろんそうですね。あとトップが新しいことに対して興味がないといけません。私はそんなに深く理解力があるわけじゃないけど、興味はあるんですよ。お客さまは興味がないと話してくれないけど、深く理解力がなくても核心をつかむ力と興味があれば話してくれる。やっぱり興味がないと駄目ですね。

松江 興味は全然衰えないですか? 知れば知るほど逆に興味が出てくる感じですか?

 そうですね。あと忘れっぽい(笑)。忘れっぽいから先に興味があるんですけどね。社員は、トップが興味を持っているか、いないかに敏感です。うちの技術者も私が全然興味を持ってなかったら、やる気を失ってしまいますよ。