一流の経営者はデータの向こうに
現場が見える(下)伊丹敬之・東京理科大学大学院イノベーション研究科教授

経理・財務の経験者には
「名経営者」に化ける
可能性がある

――CFOは、CEOの参謀役の一人です。CFOにこそ「現場想像力」が求められるのではないでしょうか。

 CFOや経理担当役員は、経理や財務といったお金にまつわる職能の責任者であり、そのほか税務や監査をつかさどったり、株主や証券アナリストなど市場関係者への説明責任を果たしたりといった仕事もしていますが、もう一つ重要な役割を担っています。

 それは、さまざまな投資案件の判断、各事業の業績や業務プロセスの生産性の測定と評価など、全社の管理会計システムを構築・運用することです。ここには、もちろん会計データの捕捉・収集、加工、蓄積、共有といった情報システムとしての機能も含まれます。

 ですから、会計データから現場の状況を読み取る現場想像力に優れているべきなのですが、現実はそうでもない。逆に、その業務や立場の性格上、CFOは不利な状況にあったといえるのではないでしょうか。

 これまでずっと会計データとつき合ってきましたから、必然的に役員のなかで最も財務リテラシーが高い。だから、どうしても会計データに偏ってしまう。しかも、会計データという「特に努力しなくても手に入る」データを中心に扱っているから、情報や感情の流れという手に入らないものへの感度が鈍くなる危険がある。

 ただし、一つ確実に言えるのは、会計の修業を積んでいる人は、そうではない人に比べて、会計データと現場の動きの対応を深く意識しさえすれば、現場想像力の習得は速いと考えられます。会計数字の生まれる計算的からくりを知っているからです。だから、賢い経営者になれるポテンシャルが高い。その偉大な前例こそ、稲盛さんでしょう。

 彼は27歳で会社を興した当初、資金繰りをはじめ、お金のことで大変苦労したことはよく知られています。だからと言って、易きにつくことなく、会計の理解についても本質を追求する姿勢を貫いた。

――CFOといえば、オラクルのサフラ・カッツ氏が注目されています。彼女は10年ほど、社長とCFOの2つの要職を兼務し、今年2015年1月、共同CEOの一人に指名されました。社長兼CFO時代には、創業者のラリー・エリソンに代わって、財務のみならず、製品や技術についてプレゼンテーションを行っていたりしました。

 女性でそういう人が出てくるというのは心強いですね。現場想像力という点では、イノベーションの優秀企業といえば必ず名前が挙げられる3Mの中興の祖もすごいですよ。ウィリアム・マックナイトという人です。