会計制度や資本市場の国際化が進展しビジネスの海外展開も加速する中、企業の経理・財務部門はその組織や機能が大きく変化している。シェアードサービスやアウトソーシングを実施したものの、わが国の制度・慣習との狭間で様々な課題を抱える企業も多く見受けられる。より本格的な国際競争に向けてマネジメント体制を固める日本企業にとって、経理・財務組織や人材面でどのような課題を抱えているか、今回の財務マネジメント・サーベイは「経理・財務部門の組織・人材」をテーマに調査を行った。

[調査の概要]
経理・財務部門の組織・人材に関する調査
実施:日本CFO協会
調査実施期間:2014年7月~2014年8月
総回答者数:757名(WEBアンケート)
[回答者のプロファイル]
職種:経理・財務84%、経営企画8%、総務人事2%、その他6%
役職:役員12%、部長28%、管理職27%、その他33%
売上高:1000億円以上57%、500億円以上1000億円未満11%、その他32%
従業員数:5千人以上43%、千人以上5千人未満24%、その他33%
業種:製造業48%、情報・サービス11%、商社・卸売10%、小売5%、その他26%

経理・財務業務が大きく変化

 リーマンショック以降の世界経済金融危機、東日本大震災、そして円高といった厳しい経営環境を乗り越えてきた日本企業は、企業の規模を問わずその多くがアジア新興市場を中心とした海外成長戦略に邁進してきた。欧米企業と比べて低い利益率やガバナンスに対する不透明さを指摘する資本市場と向き合う一方で、海外M&Aやアライアンスなど、積極策に対するリスク管理、グループマネジメントなど、より大きなプレッシャーがかかるCFOや経理・財務部門であるが、果たして人材・組織の面でどのような課題を抱えているのだろうか。

 経理・財務部門のスタッフに求められる実務知識や経験値が過去5年で変わってきたかという質問に、46%の企業が「大きく変わっている」と回答した(図1)。どのように業務が変化してきたのだろうか。専門性が高いため外部人材を活用していきたい業務を質問してみるとこれは明らかだ(図2)。上位3つが「国際税務」39%、「M&A」37%、「IFRS対応」32%となっている。外部人材を活用する主な理由は「自社に専門知識を持つ人材が不足している」が61%と多くを占め、事業展開の急速な国際展開に対応できる人材が不足していることがわかる(図3)。しかも、「経理・財務部門の要員が絶対数として不足している」という回答も26%となっており、経理・財務部門の人材不足は質量ともに不足していることがわかる。「失われた20年」の間に経理・財務部門への人的投資がいかに不十分であったかが見てとれる。

 

 

 ほぼ5年前に相当する2009年、2010年にも人材・組織に関連した調査を行っている(注1)。2000年以降の連結決算業務をきっかけとして約8割の企業で経理・財務部門の中途採用を行っていたが、中途採用は連結決算対応でひと段落ついたのか、その後の体制をどうしていくかという質問には「自社のスタッフを育成して社内体制を拡充する」の回答が92%に達するなど「自前主義」の根強さが目立ち、外部の活用や中途採用の意欲はそれぞれ26%、23%に下がっていた。しかし、今回の調査では、その後5年間の施策として中途採用をあげた回答が49%に再び上昇し、外部専門家の活用も48%とほぼ並ぶなど、「自前主義」が限界を迎えてきたことがわかる。

 専門業務における外部人材の活用は今後も増えていくようだが、「M&Aにしても、財務デューデリ、企業価値評価などは外部人材・プロジェクト人材を活用すればいいが、M&Aの後で管理会計やデータインフラを強化できる内部人材も少ないのが実態であり、この分野まで外部人材にお任せというわけにはいかない」(松田千恵子氏・首都大学大学院教授)という指摘もあるように、経理・財務部門におけるグローバル化への対応は、外部専門家を活用したとしても、丸投げはできない。従来とは違う新しいスキルセットに対応できる内部の人材強化が不可欠である。