1月下旬以降の株価急上昇は、日本銀行の追加金融緩和、ECB(欧州中央銀行)の量的緩和、そして各国の相次ぐ緩和競争で生じた過剰流動性が、米国の労働市場改善を受けたドル高によって、金利低下・通貨安・原油安の恩恵にあずかるドイツなどの欧州株や日本株に流入したことが理由だ。

 これに国内景気回復への期待や相次ぐ株主還元強化の動き、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)など公的マネーの買い支えに対する安心感から海外年金などの中長期資金も、じわじわと日本株に引き付けられ始めている。

 ただし、目先は米国経済が雇用を除く消費、住宅、投資、輸出で弱含んでおり、ドル高で米国企業決算や第1四半期GDPが失望を誘う可能性に注意が必要だ。株式市場が米国の利上げ時期後退を好感する局面から、米国景気減速やデフレ圧力を懸念する局面にシフトした場合、ドル高の調整が米国株だけでなく、ドル高を支えに上げてきた欧州株や日本株の調整に発展する可能性が強いからである。

 海外投資家の買い越し金額を見てみると2月以降の株高が現物株ではなく先物主導であったことは明らかだ。もちろん、先物の買い持ちポジションをロールオーバーしていけば、現物株を買い持ちしていることと大差はない。

 問題は現物株の最大の買い越し主体が公的マネー(=信託銀行)ではなく、主に裁定取引を行う自己勘定部門ということだ。株価指数先物の価格上昇により、現物株との価格差が広がったため、自己勘定部門がサヤ取りをしている。

 先物価格が現物価格より割高であるうちはよいのだが、そもそも証券会社の自己勘定部門は現物株を長期間保有しないため、先物価格が急落した場合、先物価格の下落と現物市場での裁定買い解消に伴う現物売りが相まって株価が急落する可能性がある。