>>(上)より続く
また、商品の開発もタイ人にやってもらったわけです。日本とは風土も文化も違いますから、やっぱり家に対する考え方も違います。タイ人が「これは売れると」思う商品を開発し、タイ人が販売すると。
これを「際立ちの現地化」と呼んどるんですけども、住宅をユニットごとに分けて工場で作り、現場に運んで組み立てるというわれわれのユニットテクノロジーと、現地の風土・文化を融合させたことで、初めてタイで300棟以上売れてきたわけです。
――タイ人がタイ人のニーズに合った家を設計してタイ人が売れば、多少高くても買ってくれそうですしね。
そうです。もともとタイ人は、われわれの住宅の強みである高気密・高断熱といった品質の良さや工期の短さについては、ものすごく気に入ってくれたんですね。ところが外観が気に入らんとか、いろいろあるじゃないですか。そのタイのニーズと融合させるのに時間がちょっと余分にかかったと。
――まぁ、海外でやると何かしら困ったことは起こる……。
500棟くらいはすぐできると思ったんだけどもな。洪水もあったし、いろんなことが絡み合って。でも、今ではタイでブランドになってるんですね、うちの住宅は。工期にしても、在来の住宅は完成までに1年かかるところを、われわれは60日でできる。タイはアフターサービスがないのが一般的ですが、われわれは長期の保証システムを持っているので、安心と保証も提供できると。
――このタイ事業での経験が、積水化学の他の事業に行かされていくと?
現地社会に適応するという「際立ちの現地化」。いわゆる材料売りじゃない工事もんというのが今、積水化学では増えてきているわけですね。これから環境・ライフラインカンパニーがアジアで拡大していこうとしている水インフラ事業とか。こういう工事もんは、現地の施工を取り入れて、どう施工体制を確立するかが重要です。
われわれはやはり、品質のいい材料を使って、いい施工をやらなきゃいかんと思っている。ところが水インフラ事業でいけば、水が引けてない地域は、少し漏水しようがまずは水が来ればいいじゃないかと、こういうことになるわけですよ。無漏水とか、そんな素晴らしいパイプを持ってきてもコストが合わないよ、とかね。そこでわれわれも案外戸惑うわけですが、そういうことも含めて、現地社会への適応をどう加速してくかということが海外でビジネスをする、私は一つの大きなポイントだと思います。自分で(タイ事業という)海外ビジネスをやっていい経験をしたし、その経験がこれから、会社全体でも生きるだろうと思っています。