問題視すべきは人口の偏在と減少速度
日本の人口学は人材不足

 私は、現在の日本の人口は多過ぎるので減るほうがいいと考えていますが、「減り方」については深刻な問題があると思います。

 まず、人口の偏在です。東京や大阪といった大都市への一極集中が進み、まるで打ち捨てられたような地方が増えています。おそらく東京にいると、人口減少といわれてもピンとこないでしょう。大都市では今も高層マンションが建ち、交通網が整備され、近代技術を用いた都市づくりが進められています。

 一方で、多くの地方がそうした恩恵に与れず、人口減少によって学校や公共機関といった最低限のインフラさえ、自分たちで賄えなくなくなりつつあります。各地域の中核都市、さらにその下の市町村に人口を呼び戻す政策が急務です。

 また、日本はTFRが2を切ってからの低下のスピードが速過ぎます。このカーブが緩やかであれば、政府や自治体は高齢化対策を立てやすいですが、ここまで急だとそれもままならない。この点についても、リスクを十分に意識する必要があります。

 そもそも、人口減少が引き起こす問題は今に始まったわけではありません。景気予測などと違い、人口予測は見通しを立てやすく、確実性が高い。少なくとも現状を見れば、20~30年後の人口構成が分かるのですから、正しく認識して対策を立てることができたはずです。

 日本は海外に比べて人口学を扱う大学・研究機関が極めて少なく、その中の一分野である歴史人口学も、日本に持ち込んだのは私が初めてでした。人口の現状分析や効果的な政策など、研究を進めれば成果が上がりやすい学問であるのに、人材が足りません。日本の社会にとって最適な人口規模はどの程度なのか、その規模で安定させるにはどのような政策が必要なのかなど、まだまだ人とお金を投入して研究されるべきテーマがたくさんあります。やみくもに「人口減少=悪」と決めつけるより、客観的な研究に基づく議論が必要でしょう。