ノーベル賞で評価された「脳内GPS」とは?

 安全に移動することを「ナビゲーションシステム」と言いますが、ヒトの脳内にも「脳内GPS」のようなメカニズムがあることがわかりました。

 この脳科学的メカニズムを明らかにすることで、2014年のノーベル医学・生理学賞を受賞したのが、米国・イギリスの脳科学者ジョン・オキーフと、ノルウェーの脳科学者夫妻のエドバルド・モーセルとマイブリット・モーセルです。

 大脳の底のところには、「脳下垂体」がぶら下がっており、それを取り巻いて目からの視神経が走っています。

 このそばに「嗅内皮質(きゅうないひしつ)」と呼ばれる場所があります(※ちなみに「嗅覚」とは関係ありません)。

 嗅内皮質には「空間地図」があって、三角形の格好をした「格子細胞(グリッド細胞)」が皮質平面にびっしりと配列されています。

 モーセル夫妻らは、2005年に、ラット(実験用のネズミ)の嗅内皮質に電極を刺入して、格子細胞(グリッド細胞)の活動を記録して、その性質を報告したのです。

 格子細胞は、上から見ると三角形に見え、ラットが三角形の頂点のところを通ると、格子細胞が活動するのです。ですから、ラットが歩くと、次々と格子細胞が働いて、足跡が残る。ラットが歩いて、特定の場所にくると、格子細胞の活動が、海馬の「場所細胞」に伝えられて、ラットがどこにいるかがわかるのです。

「場所細胞」は、場所を記憶する細胞で、オキーフが1971年に論文で報告していました。