なぜ、「0歳0ヵ月」から
働きかけないといけないのか?

 モーセル夫妻の研究が、『赤ちゃん教育』とどう関わるのかという問題は、意外な方向に発展しました。

 2012年に、ラットでいつごろから「格子細胞」が働きだすかが調べられ、ラットの格子細胞は、ラットが乳離れするころ(生後だいたい3週間)に働きだし、働きだしたときには、大人の格子細胞として働いている、ということでした。

 ラットの寿命は1~2年です。ヒトの格子細胞が、いつ大人になるかはまだ研究がありません。ヒトにも格子細胞があることが、報告されたのは2013年のことです。このほかに、ヒトでの報告はありません。

 ただ、確かなヒトでの研究データがないからと言って、歩くのをやめるのはよくありません。

 赤ちゃんが歩きはじめたときには、どのように歩き続けるかは、赤ちゃん自身、まだ決めていません。そうなると脳の発達は遅れます。「手」遅れ、「足」遅れになってしまうのです。

 育児は、「生まれた瞬間」からはじまっています。

 赤ちゃんが「0歳0ヵ月」から、親のほうから積極的に働きかけてあげないといけないのです。

 誤解してはいけないのは、この時期から東大に入れるため、勉強ができるように、教育ママになってやりなさい、というのではありません。

 この時期からやっておけば、わが子が3歳以降グンと伸びて、お母さん自身も本当にラクになるのです。

 最近の研究では、育児をするお母さんの脳の前頭前野が鍛えられることがわかりました。育児は子どものためだけでなく、まさに「育児は育自」で自分のためにもやったらいいんです。