「モチベーション重視」を掲げる
日本企業のホンネとタテマエ

 モチベーションへの働きかけとは、「個」への働きかけであり、個の多様性に対応できる多様な選択肢やインセンティブを提供し、個の意思において選択してもらうことである。そう考えると、本当に「モチベーション」という言葉の意味するところが実践できている企業がどれだけあるかは甚だ疑問だ。

 日本企業は「モチベーション重視」と言いながら、極めて限定された「平均的な個」を扱うことを中心に組み立てられており、「定年まで勤めあげる辞令一つでどこにでも転勤する男性の正社員」という1つの基幹モデルから、地域、期間、性別、種別などのそれぞれにおいて少しずつモデル数を増やしつつあるという段階である。いまだに選択肢は個人単位ではなく、モデルごとに提示されているに過ぎない。その選択肢は極めて限定されている。

 さらに日本では、特段の目的もやりたい仕事もないという「個」がほとんどだ。eラーニングなどの進み方を見てもわかるが、目的意識そのものが低いから個人のみでは最後まで到達できない人のほうが多い。むしろ、チーム制にして互いに教え合わせたりするなどの集団的手法を採用すると圧倒的に成果があがる。「○○を勝ち取るために必ずこのスキルを習得しなくては!」という渇望、つまりは個としての「モチベーション」が低いのだ。

 さらに、経済的困窮の度合いが高まる社会状況や、災害などの不幸な事態などを通じて、社会的な連帯感を重視する気運が高まっている。このような状況下においては、個人主義的な行動よりも集団を重視した全体最適化の方向への行動が美徳とされる。若くて優秀な個人の多くが、NPOなどの社会的貢献度の高そうな仕事にひきつけられているのもそのせいだ。今後中核となる若い世代には、日本に生まれ育った人々を前提に考えるならば、個人そのものを活性化しようというアプローチよりも、みんなでがんばろう!というほうがフィットする。