ダイバーシティを促進するのに、どのようなステップを踏めば良いのか。どの手順で進めれば良いのか、と企業から質問を受けることが多い。もちろん、研修や、勉強、他社を研究することや、経済的効果の算出等、多様な学習が必要である。しかし、実はなにより重要なのは「体感」を増やすことだと考えている。頭で理解する知識に加えて、目で見る、心で感じる、実感する等を重ね、腹落ちさせることが、促進する一番のエンジンになると確信している。
先日、2015年7月26日(日)、第20回国際女性ビジネス会議を開催した。第20回というのは、20年目ということで、この会議を私は1996年から、企画、開催して来た。今年の参加者は1100名を超え、約30の大使館から大使や公使もいらっしゃり、安倍総理の登壇、ケネディアメリカ大使のビデオメッセージ等も加わり、熱気のある一日となった。
国際女性ビジネス会議で
20年間、私が伝えたかったこと
この会議を始めた1996年。私はこの会議を「仕事」のことに集中しようと考えた。当時、女性が集まる会議というと、権利主張等の社会運動と捉えられがちで、多くの人に敬遠されるイメージがあったため、私は、自分の企画する会は、ダイバーシティ視点を促進するための全く違う、あたらしいイメージの会議にしようと考えたのだ。
そこで、社会問題や政治関連は避け、「働く」ということに関係するテーマのみに絞り、男性が参加しても学びの多いテーマを選び、また、私個人の主義主張と違う人も講師に招いた。多様な人が集まる場所に慣れるようにと、私自身は20年間、この会議では一度もスピーチをせず、企画、キャスティング、プロデューサーに徹してきた。この会場が「ダイバーシティ(多様性)」を体感させる文化を作る場所にしようと思ったからだ。毎回、国際女性ビジネス会議に参加すると多様な視点で考える、思考のストレッチができ、参加者は自分で考え、自分で選び、出会い、心を震わせる。私の強い意図から生まれる、特別な空間だ。
もう一つ、この会議を作り上げる際に私が意識したのは、参加者。通常の会議や講演会は、動員をかける。会員組織や、周辺組織に声をかけて参加者を募るのだ。しかし、この会議は過去に1度もそんなことをしたことがない。今回は、キャンセル待ちの方もいらしたほどだが、参加希望者全員が、国際女性ビジネス会議公式サイトから、一人ひとり申し込んで参加してくれている。その上、講演者も熱い。通常、講演者というのは、自分の講演前後だけ出席するのだが、今年でいえば60名以上の講演者のほとんどが、朝の開会から夜の終了まで10時間参加してくださっている。
これらが何を意味しているのかというと、姿勢だ。参加姿勢は見えないと思うかもしれないが、全員が感じることができる。参加者全員が、意識して、希望して、熱意を持って会場に存在し、参加しているのだ。想像してほしい。1100名の、前向きな空気を持った熱意ある人たちが10時間をともにするということを。これが、この会議が、他のどの会議とも違う圧倒的な品質と満足度を作り出す要因の一つなのである。