政府の要請をきっかけに、日程が大幅に後ろ倒しされた2015年の就活戦線。しかし、それは企業ごとの採用日程を一層バラつかせ、結果、今年の就活では、内定者がその後別の企業の面接に行ったり、内定辞退したりしないよう囲い込む“オワハラ(就活終われハラスメント)”が横行した。だが、そのようなオワハラは、企業のイメージを悪化させるだけであり、むしろ内定者を遠ざけるものでしかなかった様子。就活がほぼ一段落した今、学生たちが実際に受けたオワハラのエピソードを紹介しつつ、それらがもたらす意味を考えたい。(取材・文/有井太郎、協力/プレスラボ)

オワハラ被害者は約7割
内定者の囲い込みはなぜ過熱?

本当に怖いのは内定辞退のときのモラル不在の「脅迫型オワハラ」

――君がウチの内定を辞退したら、今後は君の大学から二度と学生を採用しない。それでも君は辞退するんだね?

 これまでは、春をメインにして行われていた学生たちの就職活動。しかし、今年は大きな変更点が生まれた。政府要請を受けた経団連の方針により、企業の選考解禁日がこれまでの4月1日から8月1日へと、大きくずれたのである。

 学生たちの就活戦線は、年々過熱ぶりに拍車がかかっていた。政府は、その影響で大学生の学習時間が削られていることを問題視。今年から就職時期を後ろ倒しにするよう、経団連に打診した。それを受けた経団連は、加盟企業に8月1日からの選考解禁を呼びかけたのだった。

 しかし、この変更は見通しが甘かった。まず、経団連の呼びかけに法的拘束力はなく、従うかどうかは企業の裁量に委ねられたのだ。そして何より、8月1日からのスタートを呼びかけられたのは、あくまで大手を中心とした経団連の加盟企業だけ。それ以外の中小企業は後ろ倒しにする理由もなく、従来通り春から選考を行った。

 その結果、これまでのように春から選考を行う企業と、夏から選考を行う企業が混在する事態となった。企業ごとに採用スケジュールはバラバラとなり、就活戦線の一層の長期化を招いたのである。

 そしてこの長期化は、企業の選考を難しくした。たとえば、ある企業が従来通りのスケジュールで春から選考を行なった場合、内定者は遅くとも7月頃には決まる。しかし、その内定者は、8月以降から始まる大手企業の採用面接をも受けるのだ。もしそこで、大手から内定をもらえれば、最初に獲得した会社の内定は辞退する可能性が高い――。