世間の声に応える形で、現在就職活動中の大学4年生から、就活スケジュールが大幅に繰り下げとなった。しかし、この取り決めには強制力がないばかりか、「学歴フィルター」「オワハラ」などの新たな歪みを生み出す一因にもなっているようだ。景気が上向き「売り手市場」になった今でも、就活生の苦労は尽きないようだ。今年の就職活動戦線の傾向を、いくつかのキーワードから分析してみたい。(取材・文/蒲田和歌、取材協力/プレスラボ)

「今年も学生はつらいよ……」
2016年卒の就活戦線、異状あり?

毎年のように繰り広げられる就職活動戦線。今年は「学歴フィルター」「オワハラ」という言葉がよく聞かれるようになった。売り手市場でも、学生たちの悩みは尽きない

「学歴フィルターは本当に存在した」

 そんなつぶやきがツイッター上の流れたのは、6月初旬のこと。ツイート主によれば、ある銀行の業界研究セミナーに申し込んだところ、「日東駒専」ランクの大学で登録したアカウントでは「満席」と表示されたが、その後でアカウントのプロフィールを「東京大学」と修正したところ、予約可能だったという。

 ツイートには2枚の画像が添付されており、アカウント主は「アカウント消される覚悟で呟くわ」とも書き込み。これを見たユーザーたちがツイートを拡散し、大きな話題となった。

 ただ、画像からは本当にツイート主が語るようなプロフィールで申し込んだものかは確認できず、信憑性は確かではない。また、この銀行はその後、メディアの取材に対して「学校名を選考要件とはしておりません」と疑惑を否定している。

 しかし、この一件が以前からあった就職活動の「学歴フィルター疑惑」に火をつけたことは間違いない。選考段階ならまだしも、セミナーすら学歴だけで「足切り」されてはたまらないと考える学生たちからは反発の声が上がり、学歴フィルターが存在するのであれば、それを最初から明確に提示するべきだという議論も交わされた。

 ネット上の思わぬ「告発」で注目が集まった今年の就職活動戦線。この件を含むいくつかのキーワードから、2016年卒の就職活動傾向を辿ってみよう。

 2016年3月卒業予定の学生、つまり現在就職活動中の大学4年生から、就活スケジュールが大幅に変更となった。数年前から指摘されていた「就職活動のスタートが早すぎる」「大学生が学業に打ち込めない」といった声を受け、政府の要請に経団連が応えるかたちで、就活開始時期の繰り下げが決定したのだ。