2巡目「本格調査」
25人の衝撃
白石 福島での甲状腺検査は2011年10月から、事故当時18歳以下だった子どもを対象に開始されました。
2013年までの1巡目の調査は、「先行調査」という言い方をされています。
その検査で、113人が穿刺(せんし)細胞診という検査によって──つまり細胞を採取して、甲状腺ガンまたは甲状腺ガンの疑いがあると診断され、そのうち99人が手術を受け、1人を除く98人が甲状腺ガンであることが確定しました。
さらに、去年から2014~2015年に実施した2巡目の「本格調査」では、ガンの疑いを含めて、25人の甲状腺ガン患者と診断されています。
広瀬 その数字が、一般の人にはわかりにくいと思うので、くわしく説明してください。
とくに「1巡目」と「2巡目」の違いの意味を。
白石 この検査は、チェルノブイリ原発事故では、「事故後4年目までは多発がなかった」という前提で、前回の話題に出てきた山下俊一氏などが設計したものです。
1巡目というのは、まだ「被曝の影響がない」状況で、通常の状態でのガンを見つけ、それをベースラインにして、それ以降を比較しようというわけです。
1巡目を「先行調査」、2巡目以降を「本格調査」と呼んでいるのは、このためです。
ところが、想定外のことが起きました。
本来なら、被曝の影響が出ないはずの「先行検査」の段階で100人以上の甲状腺ガンが見つかってしまったのです。
さらに、今年、2015年8月31日に発表された途中段階のデータなのですが、2014~2015年に実施した2巡目の「本格調査」で、ガンの疑いを含めて、25人の甲状腺ガン患者が発見されました。
これはたいへん深刻な問題だと考えられます。
というのも、2巡目というのは、「2年前の検査では異常のなかった子ども」に新たにガンが見つかったからです。
つまり、原発事故のあと、この2年以内にガンが発症したということになります。それが25人いたのです。
もともと100万人に1人か2人しか発症しない稀少な甲状腺ガンが、2年間のうちに25人に見つかったというのは大問題なのです。
津田先生のグラフを見ても明らかなとおり、被曝の影響ではないと否定する材料はありません。
あらゆる可能性を想定して、今後に備える必要があると思います。
広瀬 逆算すれば、福島県の児童が何百万人もいなければ、これほどの発症率にはならない、ということですね。
福島県の人口は200万人です。100万人に2人という話をしているのに、25人も出てきたら、逆算したらとんでもない児童数がいなければならない……。