さとう・ちえ
1970年兵庫県生まれ。1992年東京大学教養学部卒業後、NHK入局。報道番組や音楽番組のディレクターとして7年間勤務した後、2000年退局。 2001年米コロンビア大学経営大学院卒業(MBA)。ボストンコンサルティンググループ、外資系テレビ局などを経て、2012年、作家/コンサルタント として独立。2004年よりコロンビア大学経営大学院の入学面接官。近年はテレビ番組のコメンテーターも務めている。主な著書に『世界最高MBAの授業』(東洋経済新報社)、『世界のエリートの「失敗力」』(PHPビジネス新書)、『ハーバードはなぜ仕事術を教えないのか』(日経BP社)。
佐藤智恵オフィシャルサイト

佐藤 なぜ企業は「技術+美的センス」を生かしきれていないのでしょうか。

モス 日本企業が、依然として大量生産時代に培われたマインドを持ち続けているからです。日本で多くの企業が設立されたのは、第二次産業革命時(日本では主に明治時代)です。そのため、日本企業には今も大量生産することを前提に物事を考える傾向があります。

 現在、第三次産業革命が到来していて、もはや大量生産の時代ではありません。日本企業が力を十分発揮できていないのは、時代に合わせた能力開発やリソース活用ができていないからだと思います。

佐藤 日本企業は今、日本の資産を生かすために、何に取り組むべきだと考えますか。

モス まずは、日本人の能力を生かすことです。特に若者と女性を今よりもさらに活用すべきです。

 日本の若者と話をすると、彼らが非常にクリエイティブで、先端的なビジネスアイデアをたくさんもっていることに気づきます。ところが、彼らは口々にこう言うのです。「日本の伝統的な企業に入社すると、新人として何年も下積みをしなければなりません。新人が新規ビジネスを提案して推進するなんてほとんど不可能です。入社して20年ぐらいたたないと、自分が本当にやりたいことができません」と。これでは、若者のクリエイティビティをつぶしてしまいます。

 また女性の活用もすすんでいません。日本は今、少子高齢化の問題に直面していて、何もしなければ労働力は低下していくだけです。しかしこの問題も、女性の労働力をフルに活用すれば、解決することができます。巨大な労働リソースが日本の中に眠っているのです。

佐藤 働く日本人女性の1人としては、日本の男性のメンタリティを変えるのは長い時間がかかると感じています。

モス でも中には、男性自身が変わらなくては、と思っているシニアエグゼクティブもたくさんいます。

 日本で200人のトップエグゼクティブを対象に講演を行ったときのことです。私が「日本はもっと若者の能力を活用すべきだ」と訴えると、シニアエグゼクティブの1人が、突然立ち上がって、次のように発言しました。

「戦後、日本が奇跡的な成長を遂げたのは、若者が力を発揮したからです。戦争で多くの働き盛りの男性が亡くなりました。そのため日本が復興するためには若い労働力を活用するしかありませんでした。若者が創造性を発揮し、知恵をしぼったからこそ、成長することができたのです。同じことを、今、日本はやるべきだ、と私は考えます」

 若者だけではなく、女性についても同じことがいえますね。私もこのシニアエグゼクティブ同様、日本は今すぐ変わるべきだ、と思っています。日本は必ず変わることができる、と信じています。