世界中の注目を集める巨額投資の背景とは?

 フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOが、将来にわたって段階的に自らが保有するフェイスブックの株式の99%を慈善事業に寄付すると発表しました。保有株の現在の評価額は450億ドル(約5兆5000億円)ですので、寄付文化の定着している米国でも前例のない巨額の寄付の表明と言えます。

 このニュースを受け、まずは世界中で絶賛の声が上がり、当然ながら世界中のマスメディアも大々的に報道しました。しかし、発表から数日すると、今度は様々なところから懐疑の声が上がるようになりました。この寄付は、慈善活動よりも節税対策が主な目的ではないか、という声です。

節税対策としての寄付?

 そこでザッカーバーグ氏が今後どのように寄付を行なうのかを見てみると、確かになるほどと思える面が多々あります。

 米国で資産家が慈善事業に寄付を行なう場合、通常は非営利の慈善団体(charitable foundation)を設立して、そこから寄付を行ないます。ただ、慈善団体は税制面で様々な恩典があるものの、基金の使途は基本的に慈善事業に限定される他、基金の最低5%を毎年慈善目的で使わないといけないなどの制約もあります。

 そこでザッカーバーグ氏は寄付を行なうに当たって、慈善団体ではなくLLC(Limited Liability Company:合同会社)を設立しました。LLCならば、基金の使途は慈善事業に限定されず、民間企業と同様に営利事業への投資や政治献金もできます。かつ、慈善団体のように投資先などの情報開示の義務はありません。要はLLCは、慈善事業というよりも、ザッカーバーグ夫妻による自由な投資の母体として機能するのです。

 そして何より、LLCには税制上のメリットがあります。米国ではLLCに対する課税は、法人課税か構成員課税(法人をスルーして出資者であるLLC構成員、今回の場合はザッカーバーグ夫妻に損益が帰属)を選べます。従って、ザッカーバーグ氏が後者を選べば、法人税はまったくかからずに個人に対する課税のみになります。

 かつ、LLCはそれ以上の大きな節税効果も産み出します。若干ややこしいので、具体例で考えてみましょう。