航空会社の新製品「新路線」には
どこがふさわしいのかを議論

佐藤 「マーケティング」の授業では、様々な理論やフレームワークを学びますが、ANAの事例は特に何を学ぶケースですか。

チュン これはプロダクトポリシー(製品政策)のケースです。グローバル化を進めるANAにとって、どのような製品を導入するのが最適か、全社のマーケティング戦略と照らし合わせながら考えていくためのケースなのです。

佐藤 たとえばどのような新製品を候補として考えていくのでしょうか。

ダグ・チュン助教授(写真中央)はANAマーケティングチームの皆さんの協力のもと、教材を書き上げた

チュン 航空会社で新製品といえば、新路線ですね。そこでまず学生にはどの路線を新たに就航させるのがいいか、選んでもらいます。候補としてあげるのは、東京―ボストン線、東京―ヒューストン線、東京―モスクワ線です。どの路線にも、それぞれプラス面とマイナス面があります。たとえば、東京―ボストン線と東京―モスクワ線には、プラス面もありますが、JALがすでに就航している、国際線需要がそれほど大きくない、というマイナス面もあります。

 一方、ヒューストンは非常に大きな市場です。しかし、ANAの提携航空会社であるユナイテッド航空がすでに就航しています。ANAが参入するといえば、ユナイテッド航空との関係に支障が出てくるかもしれません。このように、新路線の決定には様々なトレードオフが生じるので、この路線が最適だ、とは簡単には決められないのです。

 さらには経済性の問題もあります。学生は3つの路線からどの程度利益を得られるかを計算し、その結果も加味しながら、どの路線に就航させるのがいいかを議論していくのです。

佐藤 まずは新路線ということですね。ANAは結果的に2015年、東京―ヒューストン線を就航させますが、その前段階に戻って考える、ということですね。その他に検討すべき新製品はありますか。

シンガポール航空のエアバスA380機内(ビジネスクラス)。1-2-1のシート配列により、ゆったりとした空間が広がっている

チュン 次に検討するのが、航空機です。特にエアバスA380(スーパージャンボ機)を購入するかどうか、という点を議論します。シンガポール航空、タイ航空、マレーシア航空、大韓航空、アシアナ航空など、アジアの航空会社はすでにA380を購入しはじめています。A380をグローバルマーケティングキャンペーンにも使おうという戦略です。

 各航空会社には、それぞれ独自の製品政策があります。新路線であれ、航空機であれ、重要なのはその製品政策が全社のマーケティング戦略と整合性がとれているかという点です。その点についても、ANAの事例で学んでいきます。