社外の人間に、PLは務まらない

 社内で育成するのが難しいなら、アウトソースすればいいのでしょうか?
しかし社外の人間は、構造的にPLの役割を果たせません。

 PLと似た役割にプロジェクトマネージャー(PM)があり、実は、こちらであれば、社外から連れてくるのは比較的容易です。
 PMは作業計画を立て、進捗や品質をチェックし、予め決められた期限やコストに収めるのが仕事です。優れたPMも稀少な人材ですが、ある程度ノウハウが確立されている分、市場から買ってこれる人材と言っていいでしょう。

 一方、PLの仕事は……
  ・社内のキーパーソンをプロジェクトに巻き込む
  ・事業や業務の将来像を描く
  ・社内外の関係者から、協力を取り付ける
  ・変革に不満な人々と会話し、意図を理解してもらう
  ・プロジェクト中のさまざまな選択肢について、意思決定をする
 などです。

 つまり、経営陣の代わりに会社としての意思決定をするのが仕事です。それは、社外の人間にはできません。どうしても自前で育てるしかないのです。

 優れたPLの社内育成に失敗し、スキル不足のPLがプロジェクトを率いると、どうなるのか。
 残念ながら、先に挙げたような意思決定や関係者の巻き込みに失敗すると、プロジェクトは間違いなく失敗します。
 特にITプロジェクトの場合は、リーダーシップの不足が「目に見えやすい失敗」になってあらわれます。

近年、ますますPLが育たない!

 残念なことに「この10年ほどで、PLはさらに育ちにくくなった」と、わたしがお会いする企業の方々がよく口にします。

 原因はさまざまです。
  ・会社のITをゼロから作るようなプロジェクトが減り、経験を積めない
  ・ITは詳しいが、性格的にリーダーに向かない社員しかIT部門にいない
  ・IT部門の管理職もいまひとつで、部下を育てられない
  ・目の前の仕事が忙しすぎ、育成のような将来への投資に時間を回せない
  ・外部のシステムインテグレーターにIT構築を丸投げし、社員が育たない
 などなど。

 いずれにせよ、根深く構造的な原因があり、すぐに解決するのは難しそうです。