2月1日、業界4位の日新製鋼の子会社化を表明した新日鐵住金。買収の狙いと、業界再編の引き金ともなった鋼材環境の見通しについて聞いた(日新製鋼の買収を発表した記者会見での発言を含む)。

新日鐵住金社長に聞く、だぶつく鋼材需給の見通し<br />進藤孝生・新日鐵住金社長インタビューPhoto by Kazutoshi Sumitomo

──今、日新製鋼を子会社化する狙いはどこにあるのですか。

 世界の鋼材需給環境が急速に悪化しています。厳しい環境下においても、日新製鋼を加えた新日鐵住金グループが、総合力ナンバーワンの鉄鋼メーカーとして勝ち残っていくために決断しました。呉製鉄所の高炉1基を休止する日新製鋼に対して、鋼片(半製品)を安定供給します。新日鐵住金の生産設備の稼働率が上がり、固定費を抑制できるメリットがあります。

──2016年の鋼材環境をどのように見通していますか。

 日本の粗鋼生産量は1億0500万~1億0600万トンと横ばいにみています。国内向けについては、自動車や住宅などで消費増税前の駆け込み需要が期待できるし、オリンピック商戦も軌道に乗ってきたので増えます。問題は海外向けで、こちらは極めてリスクが高い。中国経済の減速と原油価格の下落で、先行きが不透明です。

──中国の生産過剰が世界の鋼材市況を低迷させていますが、一向に正常化する気配が見えません。

 生産能力を減らすことは雇用を減らすということ。生身の人間の処遇に関わることなので、中央政府が合理化方針を出しても、雇用を維持したい地方政府が踏み込めなかった点は否めません。