貢献という「回り道」から
革新が生まれる
グラミン・ダノンが起こしたイノベーションは、これまでの常識とは違う次元、つまり「バングラデシュの子どもたちを救いたい」というリーダーの高い志(ビジョン)から生まれ、それが社員たちのやる気をさらに高めながら、同時に、ダノン全体に利益をもたらす結果となりました。
日本には「損して得取れ」ということわざがありますが、志に導かれ、大きな利益を期待せずに進められた取り組みが、グラミン・ダノンに大きな利益をもたらしたということは、本連載がここまで語ってきたリーダーシップの変化と決して無関係ではないと思います。
日々の業務のなかで、リーダーがメンバーにイノベーションや改善を求めるのはあたり前のことですが、すぐに大きな成果が出るものではありません。貢献という「回り道」から予期せぬ革新が生まれてくるのだということも、これからのリーダーは肝に銘じておくべきでしょう。
ユヌスさんは来日した際、このエピソードを2度、それぞれ大企業のトップ向けの会と、ベンチャー経営者・ファミリー企業経営者向けの会とでお話しされました。
ユヌスさんの話を聞いた大企業の方々は、非常に感心してはいたものの、「同じことをやろうとしたら役員会の説得が大変だろうね」「日本だとなかなか難しいんじゃないか」といった後ろ向きのコメントをする方が多く、ここから何か自社の参考になるものを得ようとする貪欲さはほとんど見られませんでした。